三月は去った

160405

いつの間にか四月。一年の四分の一があっという間に過ぎ去ってしまったことに唖然としてしまう。満開の桜もここ数日の雨で随分散ってしまった。桜が散ると今度は夏が駆け足でやって来そうな気がして、暑いのが苦手な私はもうちょっと咲いていてくれとベランダから見える近所の公園の桜に念を送っている。

深緑野分の『オーブランの少女』(創元推理文庫)を読んだ。

短編集なのだが何やら百合っぽい作品があるということで、読んでみたいと思っていたのだけどようやく文庫化された。

はっきりと百合なのは「片想い」という昭和初期の東京の女学校が舞台の短編。ちょっとしたミステリー+爽やかな百合という感じでなかなかよかった。これはまた読み返したくなると思う。

ただ、ひとつ注文をつけるとしたら主人公・岩様の容姿についての描写をもう少しぼかして欲しかった。

手鏡に映るわたしは相変わらず野球のベエス似の四角い顔、腫れぼったい一重の眼はいくら見開いても狐のような細目で、可憐な面立ちの環さんとは大違いである。大柄でもかんばせが美しければ宝塚の男役もかくやと持て囃されたかもしれないが、生憎そんな扱いをされたことは一度もなかった。

これでは想像の余地がない(笑)

でも、まあ岩様はまっすぐで男前な性格で素敵なのだけど。

可愛らしいタイトルとは対照的に恐ろしかったのは表題作「オーブランの少女」。ミステリーというよりホラーっぽい怖さでホラーが大の苦手な私はこの短編を深夜に読んだことを後悔した。それなら途中でやめればよかったのだけど続きが気になって最後まで読んでしまったのだ。つまり面白かった。この表題作と「氷の皇国」などはほのかに百合っぽい雰囲気が漂っているように思う。

これが著者のデビュー作。直木賞候補にもなった『戦場のコックたち』も読んでみたい。いつものように文庫化待ちだけど。

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