『東の果て、夜へ』が今年のマイベスト海外小説になりそう

何だかのどがイガイガするなあと思ったその日の夜に熱が出た。どうやら風邪をひいてしまったらしい。仕方がないので家事はひとまず置いといて大人しく布団に入って本を読むことにした。仕方がない。風邪なのだから。

そんな風にして読んだビル・ビバリーの『東の果て、夜へ』(ハヤカワ文庫)が滅法おもしろくてやめられない止まらない。一気読みの勢いで読んでしまった。そのせいかどうかわからないけれど風邪が悪化して長引いてしまった。

主人公は15歳の少年イースト。15歳だがおじであるフィンの組織の下で働いている。ある日、イーストはいつものように麻薬斡旋所の見張りをしていたのだが、ドジを踏んでしまう。イーストはフィンから新たな任務を言い渡される。その任務とは、ある人物の殺害。標的は二千マイルも離れた場所にいるため車での長旅になる。イーストとイーストの弟タイ、最年長のマイケル・ウィルソン、太った少年ウォルターがチームを組んで任務に挑む。しかし、4人はまとまりもなくバラバラで、いざこざが絶えない。組織のボスであるフィンの命令は絶対であり、イーストには任務の成功しか道は残されていない。常に火種がくすぶる危うい状況の中、イーストは任務をやり遂げようと奮闘する。

目的はともかく、少年4人の旅というので、何となく『スタンド・バイ・ミー』(映画を観ただけで原作は読んでいない)のように旅を経て友情が芽生えたり、深まったりするのかと思っていたけれど、全然違った。父親は違うようだがともかく兄弟であるイーストとタイの仲がまずとんでもなく険悪。大体イーストのふたつ年下のタイが殺し屋というのにビックリ。このタイがとにかく凶暴で何を考えているのかさっぱりわからない不気味な少年。では、イーストはどうかというと、イーストも15歳にしては落ち着いていると言うか冷めていて少年らしさがない。最年長でリーダーのはずのマイケル・ウィルソンは自己中だし、ウォルターは頭は良いみたいだけど頼りない。旅の途中で小さな衝突を繰り返す4人の間にくすぶっていた火種がとうとう爆発してしまう。

だから少年の友情物語のようなものを期待するとがっかりすると思うけど、ロード・ノヴェル、クライム・ノヴェルとしてはかなり面白い。

イーストは顔を上げ、口の中の嫌な味を呑み込もうとした。頭上に吊り下げられたプラスチックの大恐竜が、くるくると回っている。ハイウェイを疾走する車を一台ずつまじまじ見ないように自分にいい聞かせなければならなかった。物事が動いている。はじめ、バンでの移動は、どこかに飛び出すような、自由になるような気がした。でも、べガスから先は、また閉じこめられるような気がしてならない。猛スピードで走り去るヘッドライトが、どれも自分に向けられているような気がしてならない。

海外小説をこんなに夢中になって読んだのは久しぶり。今年のマイベスト海外小説になると思う。と言っても、私は海外小説をあまり読まないし、よく考えたら海外小説の新刊文庫を買ったのはこれが今年初めてかもしれないけれど。

買った本

津村記久子『エヴリシング・フロウズ』(文春文庫)、三浦しをん『政と源』(集英社オレンジ文庫)購入。

『エヴリシング・フロウズ』には『ウエストウイング』で小学生だったヒロシが中学三年生になって登場しているらしいので読みたいと思っていた。

ウエストウイング
8月も終わるというのに相変わらず暑い。もしかして夏はこれからが本番でまだまだ暑くなるんじゃないかと疑いたくなる。 津村記久子の...

『政と源』は『まほろ駅前狂騒曲』を読んで、やっぱりしをんさんの小説は素晴らしいと再確認したので未読のこの小説を読もうと思って買った。

スポンサーリンク
スポンサーリンク

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です