エリザベス・ベア『スチーム・ガール』良い百合SFでした

私のSFに対するイメージは、宇宙とか、未来の世界とか、コンピューターとか、ロボットとか、そんなイメージしかなくて、進んで読もうと思うジャンルではなかった。

それなのに「文庫で千円超えって!」とブツブツ文句を言いながらエリザベス・ベアの『スチーム・ガール』(創元SF文庫)を買ったのは、どうやら百合らしいと知ったから。

主人公は高級娼館モンシェリで働くカレン。ある夜、モンシェリに傷を負ったメリー・リーという女性がインド人の少女プリヤを連れて逃げてきた。プリヤは町の有力者バントルが営む劣悪な環境の娼館で働かされていた。メリー・リーとプリヤをかくまったモンシェリを敵視するようになったバントルは、卑劣な手段でモンシェリを叩き潰そうとする。プリヤに惹かれ、愛するようになったカレンは彼女を守るためバントルと戦う決意をする。

私が想像していたようなSFっぽさはあまり感じなかった。でも、それが良かったのかもしれない。苦手意識なく読むことができた。

それで、お目当ての百合ですが、こちらは予想以上にキュンキュンできて良かった。

カレンは出会ってすぐにプリヤを恋愛対象として意識するのだけど、そんな自分の気持ちをプリヤが知ったら不愉快に思うのではないかと思い、何も伝えずプリヤの世話をあれこれ焼く。ただ、カレンの尽くしっぷりがなかなかすごくて、言葉にしなくてもプリヤが気付いてしまうのだけど。

 

「カレンはわたしに何か特別な思いがあるような、そんな気がするんだけど」
お腹のなかの朝ごはんが、まとめて口から飛び出しそうだった。いまもし立っていたら、どすんとすわりこんでいただろう。肋骨をこぶしで殴られた気がする。プリヤの顔をまともに見ることができなくて、つい視線をおとし、彼女の膝を見つめた(そんなところを見つめたら、いやらしいと思われるぞ、メメリー)。
息が詰まって返事ができない。だから黙ってうなずいた。
プリヤがそっとやさしく、わたしの頬に触れた。そっとやさしく、顎を持ち上げる。そして唇と唇を、そっとやさしく触れ合わせた。

 

SFとして面白いのかどうかわからないけど(終盤はアクション小説として楽しめた)、百合としてはなかなか素晴らしかったです。

ちなみに原題は『Karen Memory』。こちらの方が内容にしっくりくると思うけれど、それだとインパクトが弱いのかな。

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買った本

夫が楽天ポイントが貯まってるから使ってもいいよと言ってくれたので、本を買うことにした。買おうと思っていた佐藤正午の『鳩の撃退法』上下巻か、宮本輝の『田園発 港行き自転車』上下巻のどちらにするか迷ったけれど『鳩の撃退法』にした。

今は柴崎友香の『パノララ』を読んでいるし、他に積読本があるから読むのはもうちょっと先になりそう。

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