古内一絵『風の向こうへ駆け抜けろ』主人公は地方競馬の女性騎手

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最近は暑すぎてエアコンをつけっぱなしで寝ている。朝起きてとりあえずエアコンを消して窓を開けるのだけれど、ムンとした生あたたかい風が入ってきて、ついさっきまで快適だった部屋が途端にじっとりとした空気に包まれてしまう。そのうえ近所の公園から蝉の大合唱が聞こえてくるからうんざりしてしまう。

 

古内一絵『風の向こうへ駆け抜けろ』(小学館文庫)を読んだ。

競馬小説やエッセイが好きな私が文庫化を待ちに待っていた作品だ。そもそも競馬や競走馬あるいは騎手を描いた小説というのはそんなに多くないのではないかと思う。だから本棚から既に何度も読んだディック・フランシスの競馬シリーズや寺山修司の競馬エッセイ、宮本輝の『優駿』なんかを引っ張りだして読んでいる。

『風の向こうへ駆け抜けろ』の主人公・瑞穂は新人の女性騎手。ただし、中央競馬ではなく地方競馬の騎手だ。広島にある鈴田競馬場の騎手になった瑞穂だが、所属厩舎は調教師の緑川を始め、人も馬も曲者揃い。思い描いていた騎手生活とはかけ離れた毎日。初勝利を飾ることも出来ず焦る瑞穂は有力馬主の溝木に声を掛けられ誘いに乗るのだが、そのせいで瑞穂も緑川厩舎も窮地に陥る。何とか走れる馬を探し求めて出会ったのが人間不信の競走馬フィッシュアイズ。瑞穂と緑川厩舎は一丸となってフィッシュアイズを調教し、レースに出走させる。するとフィッシュアイズは秘めていた才能を開花させ勝利を重ね、中央のG1レース桜花賞を目指すまでになる。

女性騎手が主人公の小説だということは知っていたけれど、てっきり中央競馬の騎手だと思っていた。まあ、主人公が地方競馬の騎手だからと言って、この小説の面白さには関係ないけれど。そんなに上手くいくのかとつっこみたくなるところもあるけれど、こういったスポーツ小説は変にひねらず直球勝負のストーリーの方が読んでいてスカッとするからそれで良い。レースの描写など臨場感があって引き込まれたし、久しぶりに面白い競馬小説を読むことが出来た。続編ももちろん読むつもり。ただし文庫化を待つけれど。

文庫の巻末特別寄稿をJRAの女性ジョッキー・藤田菜七子騎手が書いている。最近は落ち着いてきたけれど、デビュー直後は藤田騎手への注目度は高く、スポーツニュースなどでもよく取り上げられていたので、競馬好きでなくとも藤田騎手のことをテレビで観たことがあるという人もいるかもしれない。藤田騎手が瑞穂と自分を重ね合わせ、自分自身の体験談などを語っていて興味深い内容だった。

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買った本

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清水晴木『緋紗子さんには、9つの秘密がある』(講談社タイガ)、津村記久子『君は永遠にそいつらより若い』(ちくま文庫)購入。

『緋紗子さんには、9つの秘密がある』は百合なんじゃないかという評判を目にしたので。『君は永遠にそいつらより若い』は津村さんの小説を読むようになってデビュー作であるこの小説も当然気になっていたのだけど、あらすじやレビューにざっと目を通した感じでは何だか重苦しそうで私好みではなさそうだったので避けていた。でも、やっぱり気になるので読んでみることにした。

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