ねこ、ネコ、猫

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好きな作家の一人である佐藤正午さんが『月の満ち欠け』で第157回直木賞を受賞した。直木賞効果なのか佐藤正午さんの本が売れているようで、アマゾンではそのほとんどが発送に数週間かかる状態になっている。そのうち買おうと思っていた『身の上話』の文庫も2〜4週間以内に発送となっていて、そうなると今すぐ欲しくなるから全く困ったものだ。受賞作についてはいつも通り文庫化を待つつもり。

群ようこの『パンとスープとネコ日和』と『福も来た パンとスープとネコ日和』(共にハルキ文庫)を読んだ。小林聡美さんが好きで、先にドラマを観ていて、そのドラマがすごくよかったから逆に原作はどうなのかと思っていたのだけれど、原作もよかった。ドラマは原作と多少設定を変えているところはあるけれど、原作の雰囲気を壊すことなく作られていることがわかった。

『パンとスープとネコ日和』の主人公アキコは、食堂を営んでいた母親が突然亡くなったことをきっかけに出版社を辞め、母親の食堂を改装してパンとスープがメインの店を始める。母ひとり子ひとりだったアキコが一緒に暮らしているのは猫のたろ。アキコが素材にこだわり丁寧に作るサンドイッチとスープがとても美味しそうで、私ももう少し丁寧に料理をしなければと思った。思うだけだけど。色々あったが店は順調だし、アルバイトのしまちゃんはとてもいい子だし、このままほんわかと終わってくれればというところで猫のたろとの悲しい別れが訪れる。ドラマではたろが姿を消したと記憶しているけれど、原作では違う。そして『福も来た パンとスープとネコ日和』では、新たな猫たちとの出会いがあるのだけれど、その猫たちがアキコの元に来ることになった経緯がなかなかひどい話で、ここだけは読むのが辛かった。並行して読んでいた角田光代さんの『今日も一日きみを見てた』(角川文庫)も偶然だけど猫の話というかエッセイで、角田さんはこの本の中で角田さんの猫紀元前、BC(Before Cat)と猫紀元後、AC(After Cat)における変化について次のように書いている。

ACになっても、私は自分か世界のどちらかが、あるいは両方が変わったことなど意識していなかった。猫の出てくる一本の映画でようやく気づき、そんなことどもを思い出したわけである。すべての猫が、架空のものも過去のものも未来のものも含めて、平穏におだやかに生きていてほしいと気がつけば望んでいる。猫がおそろしい目に遭うことは耐えがたい。そういえば、村上春樹さんの『海辺のカフカ』を先だって読み返していたら、猫がひどい目に遭う場面があって、心底おそろしかった。その部分を覚えていなかったから、BC時代に読んだときは、その場面はさほどこわくはなかったのだ。「猫」が、ただの記号としての猫に過ぎなかったのだ。でも今や、「猫」と書いてあれば、実体が浮かぶ。村上春樹さん、あなたは猫好きではなかったのかと震えながら読み、ナカタ老人の、猫を救うためのその直後のおこないに「私もきっとそうすることしかできないだろう」と深くかなしく納得した。

小説の中で猫をひどい目に遭わせたからといって、群ようこさんや村上春樹さんが猫好きでないというわけでは決してない。お二人が猫好きなのはエッセイなどを通じて知っている。しかし、私も角田さんと同じで出来れば猫(あるいは犬)がひどい目に遭う場面は読みたくない。私は猫も犬も飼ったことがある。『海辺のカフカ』については、そういう場面があると知って読むのを躊躇して、結局まだ読んでいない。殺人事件が起きるミステリーは読むくせにと自分でも思うけれど。

しかし『パンとスープとネコ日和』は好きなので、シリーズ第3弾の『優しい言葉 パンとスープとネコ日和』も是非読みたい。

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買った本

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古内一絵『風の向こうへ駆け抜けろ』(小学館文庫)と群ようこ『福も来た パンとスープとネコ日和』(ハルキ文庫)を買った。

『福も来た パンとスープとネコ日和』は既に読み終え、今は『風の向こうへ駆け抜けろ』を読んでいるところなのだけど、これが面白い。私が競馬好きということもあるかもしれないけれど、わくわくしながら読んでいる。

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