洋子さんの本棚

昼ごはんを食べながらBSで2時間サスペンスを観るというのがすっかり習慣になっていたのだけれど、浅見光彦、十津川警部、赤い霊柩車、タクシードライバーの推理日誌など、お馴染みのシリーズ作品の再放送が多く、2度、3度と観ることになるのでさすがに飽きてきた。

それで、最近はAmazonプライムビデオでドラマやアニメを観ている。今日は『グーグーだって猫である』を観た。小泉今日子主演の映画ではなく、宮沢りえ主演のドラマの方。ストーリーも音楽もゆったりしていて、昼ごはんを食べながら観るのにちょうど良い。今日は袋に麺と粉末ソースしか入っていないインスタントの焼きそばに炒めたウインナー足した(残念ながらキャベツがなかった)のをもぐもぐと食べながら第2話を観た。第1話よりも黒木華ちゃんの出番が多くて嬉しかった。

 

ちょっとずつ読んでいた『洋子さんの本棚』(集英社文庫)を読み終えた。

『洋子さんの本棚』は、小川洋子さんと平松洋子さんがお題に沿った本をそれぞれに挙げて、それについて話す対話集。

私はお二人の熱心な読者というわけではない。小川さんの小説は『ミーナの行進』しか読んだことがないし、平松さんの本も『野蛮な読書』しか読んでいない。ただ、本について書かれた本が好きという理由で、この本を読んだ。本についての話はもちろん面白かったけど、本の話から膨らむ2人の洋子さんの会話を面白く読んだ。

宮本輝の『錦繍』の話から、平松さんが「小川さんは別れた後で宿題を抱えているみたいなこと、ありますか。」と聞くと、小川さんが「私は半ば無理矢理、過去は完全だと思うようにしています。」と答える。平松さんもまた「過去は必然だったのだ」と思うようにしていると言う。

 

平松 ただ、あれは必然だったと自分の中でおさめていくにも、やはりエネルギーが要する。認めていく、肯定していく力。それを生きる力と言ってもいいのだけれど、何か前に向かっていく力を持つことは大事ですよね。自分をせいぜい、たかだかだなと思いつつ、まだ自分でわかっていない、何か知らないものがあるんじゃないかと目を向けていく。自分ひとりで出来ることって本当に限られていると思うので、そこで誰かと一緒にいてもいいし、仕事でも何でもいいんですけど、そうすると自分の中に自分でも思っていなかったようなものがふっと開く瞬間がある———生きる力って、出会う力でもありますね。

小川 人でも、あるいは芸術でもいいのですが、出会うことで人はそれまでの自分の人生を肯定するためのエネルギーを養うんでしょうね。

平松 自分で自分をあまり規定してしまわない方がいいのですね。せいぜい、たかだかと思っていれば、次がある。

 

過去のことをくよくよ考えがちな私はこれを読んで、なるほどそういう考え方もあるのだなと思った。

 

こういう本を読むと、読みたい本ができるもの。読んでみたいと思ったのは、「第四章 人生のあめ玉」で小川さんが挙げていたレイモンド・カーヴァーの『自転車と筋肉と煙草』。短編集『頼むから静かにしてくれ』に収録されている一編で、父と息子の関係がテーマの小説。

 

小川 少年が最後、こう言うんですよ。「父さんが小さかった頃に知りあえたらよかったのになあ」。でも、「そう考えるとすごく寂しくなるんだ」って。男の子ってこんなこと考えてるんだなあと、私の少年愛がものすごくくすぐられる短編なんです。しょぼくれて、煙草さえもやめられないような気の弱い男なんだけれど、でもやっぱり息子にとっては、ある時期、ヒーローなんだと思う。そしてそれはまた、もう一つ上の世代の父親の記憶ともつながっている。

 

少年愛がくすぐられるって、ちょっとわかるような気がする。

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買った本

文庫化を楽しみにしていた村上春樹の『ラオスにいったい何があるというんですか? 紀行文集』(文春文庫)を買った。

文庫で940円となかなかのお値段だけど300ページもない。『遠い太鼓』ぐらい読み応えのある厚さを期待していたのに。

タイトルにラオスとあるけれど、ラオスの旅がメインというわけではないようだ。

これからちびりちびりと読むつもり。

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