村上春樹の小説を読んだからか、朝食にきゅうりとハムのサンドイッチを作ったり、昼にスパゲッティを作ったりしてしまう。おまけにお風呂でビーチ・ボーイズなんか聴いてる。
村上春樹『ダンス・ダンス・ダンス』上・下(講談社文庫)を読んだ。
『羊をめぐる冒険』を久しぶりに読み返したら、もっと村上春樹を読みたくなってしまったので、『羊をめぐる冒険』の4年後を描いたこの小説を読むことにした。
『羊をめぐる冒険』や『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』ほどではないけど『ダンス・ダンス・ダンス』も村上春樹の長編小説の中では好きなほうだ。だけど、久しぶりに読み返したら『羊をめぐる冒険』を読んだ時よりもさらに内容をすっかり忘れていた。ユキのことも五反田君のこともユミヨシさんのこともきっぱりと忘れていた。やれやれ。
哀しげなホテルだった。十二月の雨に濡れた三本脚の黒犬みたいに哀しげだった。
ジャック・ロンドンの波瀾万丈の生涯に比べれば、僕の人生なんて樫の木のてっぺんのほらで胡桃を枕にうとうとと春をまっているリスみたいに平穏そのものに見えた。
前はこういういかにも村上春樹っぽい表現はそれほど好きではなかったのだけど、今になって読み返すと結構好き。
そして新聞を読んでしまうと、フォークナーの「響きと怒り」の文庫本をバッグから出して読んだ。フォークナーとフィリップ・K・ディックの小説は神経がある種のくたびれかたをしているときに読むと、とても上手く理解できる。僕はそういう時期がくるとかならずどちらかの小説を読むことにしている。それ以外の時期にはまず読まない。
精算を終えると、ホウレンソウを茹でてちりめんじゃこと混ぜ、軽く酢を振って、それをつまみにキリンの黒ビールを飲んだ。そして佐藤春夫の短編を久し振りにゆっくりと読みかえしてみた。
作中にいろんな本が出てくるのも村上春樹の小説を読む楽しみのひとつ。フォークナーもフィリップ・K・ディックも佐藤春夫も私は読んだことはないのだけれど。
内容をすっかりきっぱり忘れていたので、終盤の展開にとてもドキドキした。こんなミステリー小説っぽい内容だったっけと思いながら読んだ。読み終えて、ああ、私はやっぱり村上春樹が好きなんだなあと思った。
Kindle版はちょっとだけお得。
買った本
マーセル・セロー著・村上春樹訳『極北』(中公文庫)、堀江敏幸『郊外へ』(白水Uブックス)購入。
以前NHK BSプレミアムで放送された『推しボン!~あなたに効く!著名人の極上ブックガイド~』でサバイバル登山家・服部文祥さんが推しボンとして紹介していたのがマーセル・セローの『極北』。
服部さんは、その番組で『極北』について「本当にこういう主人公のこういう小説、こういう世界観みたいなものを書いてみたいなっていう風に思わせられて、ある意味では悔しかった。いつかこんなものを自分も出来たらなっていう風に思った小説」と話していた。
その後、文庫化もされたのでそろそろ読もうかなと思っていたのだけど、内容紹介にある「極限の孤絶」、「酷寒の迷宮」というキーワードにひるんでしまい、なかなか手を出せないでいた。
しかし、先日Amazonプライムビデオで『残された者 北の極地』という過酷なサバイバル映画を観て、今なら読める、読みたいと思い『極北』の文庫本の購入を決めた。
文庫化された堀江敏幸作品は『本の音』以外全部持っているのにデビュー作である『郊外へ』は買わずにいた。『郊外へ』は文庫ではなく新書なので、もしかしたら文庫化されるかもしれないと思って待っていたのもあるけれど、いい加減に買うことにした。