和田誠・平野レミ『旅の絵日記』レミさんの声で脳内再生

すっかり暖かくなって、朝、洗濯物をベランダに干すのが苦じゃないのが嬉しい。歩いてスーパーに買い物に行くのも(ちょっとだけ)億劫じゃなくなった。買い物に行く途中、ぽつんと1本だけ桜の木があるのに気付いて、少し立ち止まって桜の花を見た。スーパーで買ったよもぎあんぱんが思っていたよりも美味しかった。

 

和田誠・平野レミ『旅の絵日記』(中公文庫)を読んだ。

私は日記を読むのが好きなので、タイトルに「日記」と付く本を見つけると気になる。

 

他人の日記を読むのが好き
他人の日記を読むのが好きだ。 といっても、夫の日記(そもそも夫は日記などつけていない)をこっそり盗み見たりするのではない。本あるいは公開されているブログなどで他人の日記を読むのが好きなのだ。 私の本棚...

 

『旅の絵日記』は、“旅の”とあるように、夏休み(1989年7月25日〜8月18日)に家族でフランス、スペイン、モナコ、イタリアを旅した時の日記。日記を平野レミさん、イラストを夫の和田誠さんが描いている。たまに和田さんのコラムや長男・唱くん、次男・率くんの作文なども挟まっている。唱くん、率くんと書くのは、当時の二人が中学2年生と小学4年生だから。

家族旅行には、レミさんたち家族4人の他にフランスに住んでいる友人で写真家の関原さんが同行している。旅先での移動はレンタカーで、運転は関原さん。私は車の運転を長時間するのが苦手なので、一人で運転する関原さんに対して大変だろうなあという気持ちになった。

私のイメージする平野レミさんは、マシューTVで藤井隆さん演じるマシュー南を毎回あたふたさせていた、あのレミさん。日記でのレミさんは私のイメージそのままで、文章には気取ったところがなかった。だからなのだろうか、読み始めたら自然とレミさんの声で脳内再生された。

 

ダロカからまたつっ走る。めったにすれちがう車もない一本道。電信柱が並ぶほかは何もないところがあって、車を降りてみる。三六五度全部平原。家も木も山も何もない。「わーすごい」と私が言って、へっぴり腰で指をつき出して遠くを指しながら「だーーっ」とひと回りしたら、それが子どもに受けて「またやって」と言われる。何度もやった。そのたびに子どもたちは根こそぎ笑う。

 

旅の間に食べたものについてしっかりと書いてある。私が日記を読む楽しみのひとつが書いてある食べ物のことなので、これは嬉しい。

 

暑いので生ビール。ライスサラダがおつまみについてきた。ツナ、ピーマン、卵、オリーヴ、みーんなお米くらいの大きさになってる。生ビールともどもおいしい。
イエスというスープは豚骨ダシのきいたコンソメだ。かき玉スープみたいなもの。おいしい。夫が頼んだ野菜スープはテーブルに来てからシェリー酒をドバドバ入れる。ちょっと飲んだらシェリーのむこうに豚骨と野菜の味がほのかに見える。夜に飲みたいような味。

 

それから、唱くんについてこんな事が書いてあった。

 

車の中では子ども二人がキャッキャとはしゃいでいる。つまらない歌を大声で歌ってうるさくてしようがない。中学生もすっかりガキに戻っている。感心したこともあった。唱が率に「おまえはこの音で歌え」と教え、自分は別のメロディを歌って即席でハーモニーを作っていたのだ。私たちの世代ではできなかったことだ。

 

TRICERATOPSのボーカルの和田唱さんが和田誠さんと平野レミさんの息子だと私が知ったのはわりと最近。中学生の頃からレミさんが感心する歌を歌っていたのかと、ちょっとミーハーな気持ちで読んだ。

レミさんの日記は面白いし、和田さんの絵も楽しめる素敵な絵日記だった。

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