『羊をめぐる冒険』村上春樹の長編小説で一、二を争うほど好きなはずなのに

阪神競馬場の桜を画面越しに見て、ああ、春だなあと今年も同じことを思う。大阪杯で断然の1番人気エフフォーリアが9着に敗れた。競馬に絶対はない。そもそも「絶対」と言い切れるものなんてあるのだろうか。桜花賞まで桜がもちますように。これも毎年思うこと。

 

久しぶりに村上春樹を摂取したくなったので、『羊をめぐる冒険』上・下(講談社文庫)を読んだ。

摂取と書いたのは、穂村弘の『きっとあの人は眠っているんだよ 穂村弘の読書日記』(河出文庫)にある「乱歩を摂取したくなる」を真似てみたかったから。

 

「羊のことよ」と彼女は言った。「たくさんの羊と一頭の羊」
「羊?」
「うん」と言って彼女は半分ほど吸った煙草を僕に渡した。僕はそれを一口吸ってから灰皿につっこんで消した。「そして冒険が始まるの」

 

私は、『羊をめぐる冒険』が村上春樹の長編小説の中で一二を争うほど好きだ。好きなはずなのだけど、久しぶりに読み返したら、内容をほとんど忘れていた。でも、私にはよくあることだからもう驚かない。鼠やジェイはもちろん、耳が魅力的なガールフレンド、いるかホテル、羊博士、羊男といった断片的な部分は覚えていたけれど、何のための「羊をめぐる冒険」で、その結末はどうなったのかということはさっぱり覚えていなかった。

ちなみに村上春樹の長編小説で一二を争うほど好きなのは、『羊をめぐる冒険』と『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』。でも、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』もしばらく読み返していないから、たぶんほとんど忘れてしまっているんじゃないかと思う。

 

村上春樹の小説を読む私の楽しみのひとつは、ストーリーの中に本や音楽が出てくること。

『羊をめぐる冒険』の上巻で「僕」は「シャーロック・ホームズの事件簿」を読んでいる。

 

そのあいだ僕はソファーに座って、「シャーロック・ホームズの事件簿」を読んでいた。その話は「私の友人ワトスンの考えは、せまい限定された範囲のものではあるが、きわめて執拗なところがある」という文章で始まっていた。なかなか素敵な出だしだった。

 

下巻の冒頭でもまだ「シャーロック・ホームズの事件簿」を読み、下巻の後半では「シャーロック・ホームズの冒険」を読んでいる。

 

僕はスタンドの灯りで「シャーロック・ホームズの冒険」を読んだ。

 

私が持っているシャーロック・ホームズ・シリーズは、創元推理文庫の『シャーロック・ホームズの冒険』と『回想のシャーロック・ホームズ』の2冊のみ。いずれも深町眞理子さんの訳。ずっと前に新潮文庫のシャーロック・ホームズ・シリーズのどれかを買って読んだけど私には訳が合わなかった。深町さんの訳はいい。

『羊をめぐる冒険』を読んだら、さらに村上春樹の小説を読みたくなったので、今度は『ダンス・ダンス・ダンス』上・下(講談社文庫)を読むことにした。

新刊文庫メモ

5月発売の新刊文庫に文庫化を諦めかけていた作品を見つけた。

まずは、西村賢太『一私小説書きの日乗 憤怒の章』(角川文庫)。5月24日発売予定。

『一私小説書きの日乗』はシリーズ1作目のみ文庫化されていて、その後は単行本のみで長い間、文庫化されなかった。私は1作目をKindle版で購入した。そして、そのほとんどをお風呂で読んだ。続きも読みたいと思っていたので、シリーズ第2弾がようやく文庫化されるのは嬉しい。

ちなみにシリーズは『一私小説書きの日乗』、『一私小説書きの日乗 憤怒の章』、『一私小説書きの日乗 野性の章』、『一私小説書きの日乗 遥道の章』、『一私小説書きの日乗 不屈の章』、『一私小説書きの日乗 新起の章』、『一私小説書きの日乗 堅忍の章』と出版社を変えつつ第7弾まで出ている。全て文庫化されるといいのだけれど、「新起の章」、「堅忍の章」は本の雑誌社だからどうなるだろうか。

 

5月発売の新刊文庫にこれも文庫化を諦めていた作品。

滝口悠生『高架線』(講談社文庫)。5月13日発売予定。

滝口さんの小説は『死んでいない者』(文春文庫)しか読んでいない。『高架線』と『茄子の輝き』を読みたいと思っていたのだけど、これがなかなか文庫化されない。『高架線』の単行本は2017年9月、『茄子の輝き』は2017年6月に出ており、4年半以上経っている。もしかして何らかのこだわりがあって文庫化しないスタイルなのかと諦めかけていた。

特に『高架線』は、どうやら古アパートが舞台らしく、私好みの感じで読んでみたかったのだ。

 

それから、今月発売の新刊文庫に文庫化を楽しみにしていた作品がある。

それは、江國香織『彼女たちの場合は』上・下(集英社文庫)。4月21日発売予定。

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