『武田百合子対談集』対談集でも変わらぬ面白さ

いい加減に洗ってしまわなきゃと思いながら放っていたニットのカーディガンを今日ようやく洗った。放ったまま冬にならなくてよかった。

 

『武田百合子対談集』(中公文庫)Kindle版を読んだ。お風呂で。武田百合子さんの本は文庫本で揃えていたので文庫本かKindleで迷ったけど、お風呂で読むために今回はKindleにした。

この対談集には深沢七郎、金井久美子&金井美恵子、吉行淳之介との対談のほか岸田今日子が聞き手の『富士日記』についてのインタビュー、それに「百合子さんのこと」という金井姉妹による対談も収録されている。

ちょっとずつ読むつもりだったのに面白くて、ずんずん読み進めてしまった。対談集は日記やエッセイと違うから、もしかしたらそんなに面白くはないのかもという私の予想は外れた。

たとえば深沢さんとの対談で百合子さんが泰淳さんの口述筆記をしていたことについて話を振られると、

 

武田 でもね、喧嘩もする。途中であたしが字を間違えたりすると、武田はとんでもない字だってすごく怒るのよ。向うは入歯だから、たとえば「袴」と言ったのを、「墓場」と聞き違えるようなことがあるんですよ。向うが怒ると、こっちも五倍くらい怒ったりしてね。(笑)あたしもちょっとうんこなんて言って、うんこに行ったり、武田がウーッと考え込んでるときは、そのへんにお菓子を置いといて食べてみたり、武田がビール飲んでばかりいると癪にさわって、こっちもコップを取って飲んだり———そんな感じでやってました。

 

百合子さんの文章と同じように対談もあけっぴろげで面白い。

 

深沢さんとの対談では、百合子さんが倒れた泰淳さんを抱き抱えると、泰淳さんは時々「死ぬ練習」と言っていたというエピソードを話していて、

 

あたしは武田はやさしい人だなって、いまになって思ってる。のろけですね、これ。武田は、自分が一気に死んでしまったらあたしがびっくりするから、始終死ぬ練習をして驚かさないようにしてくれたんだなと思って。死んでゆく人って変なものね……。

 

切ないけれど素敵な惚気だと思った。

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