Netflixで観たドラマ『架空OL日記』がとても面白かった。やはりバカリズム脚本はいい。ところで、同じバカリズム脚本ドラマ『ブラッシュアップライフ』に『架空OL日記』の出演者が多数出演しているのに気付いた。今更なのは私が『ブラッシュアップライフ』を先に観ているからなのだけど。バカリズムさんと夏帆さん、臼田あさ美さん、それに『架空OL日記』では「かおりん」の三浦透子さんはすぐにわかった。しかし「酒木さん」の山田真歩さん、「さえちゃん」の佐藤玲さんは調べて初めてわかった。山田真歩さんが『ブラッシュアップライフ』の麻美(安藤サクラ)の研究室での先輩役だったとは。メガネ無いし髪型違うしですぐには気付けなかった。とにかく今度は映画の『架空OL日記』を観よう。
お風呂で少しずつ読んでいた青山南(著)・阿部真理子(絵)『本は眺めたり触ったりが楽しい』(ちくま文庫)Kindle版を読み終えた。書評ではなく読書エッセイ、というか読書に関するエッセイ。
防水機能のあるKindle Oasisを買ってからお風呂での読書が前よりもグッと快適になった。私がお風呂で読むのはエッセイか漫画。小説もたまに読むことはあるけれど、お風呂であまり長々と読書をするとのぼせてしまうので区切りがつけやすく軽く読めるエッセイがいい。
実は、『本は眺めたり触ったりが楽しい』の他に前から気になっている読書エッセイがあった。それは、管啓次郎『本は読めないものだから心配するな』と長田弘『読書からはじまる』。『本は眺めたり触ったりが楽しい』も含めた3冊いずれもちくま文庫。『本は読めないものだから心配するな』と『読書からはじまる』の方がずっと前から気になっていたのに『本は眺めたり触ったりが楽しい』を選んだのは、アマゾンでそれぞれの試し読みをした結果。その時の私の気分に合う文体だったのだ。
『本は眺めたり触ったりが楽しい』の書き出しはこんな感じ。
中年のおじさんたちがしょうのないことを楽しそうにおしゃべりしている『発作的座談会』(本の雑誌社)を読んでいたら、画家の沢野ひとしが本を読むのがおそろしく速いのを知って、愕然とした。なんと、本は本屋で買った後ぱらぱら読んでいるうちに読みおわってしまうという。近くの喫茶店にはいってさっき買った本をいざ読もうとしても、もう読みおわってるので困ってしまうんだと。
嘘だろ、おい、と本を読むのがめっぽう遅いぼくはおもわずつぶやいてしまったが、でも、まあ相手が雑誌なんかの場合はぼくだって沢野に負けないスピードで読んじゃうわけだから、あながち嘘ではないんだろう。
『発作的座談会』の話が出ているけれど、初めて読む青山さんの文体(『本の雑誌』で連載していたにも関わらず)に椎名誠さんや目黒考二さんに似たものを感じた。大学生の頃にがっつりハマった椎名さんや私の愛読書『笹塚日記』の目黒さん(外れ馬券シリーズの藤代三郎さんでもある)に似たものを感じるのなら私に合うだろうと思ったし、軽めの文体が読みたい気分だったこともあったので、今回は『本は眺めたり触ったりが楽しい』に決めた。ちなみに今、『笹塚日記 親子丼篇』をちびちび読み返しているところなのだけど、そこに「山の上ホテルで、坪内祐三氏の快気祝い+出版記念パーティ。嵐山光三郎氏、青山南氏を始め、知り合いにたくさん会う」とあった。
『本は眺めたり触ったりが楽しい』は読書についてのエッセイということで、様々な本からの引用などがあったりして、そういうのが好きな私には楽しい読書になった。
小説家の片岡義男が、あるシリーズ本の宣伝パンフレットのなかで、つぎのようなことを書いていた。「これはおもしろそうだ、と思った本をニューヨークに注文しておくと、やがて届く。本棚にどんどん、たまっていく。読むともちろんおもしろいが、たまに手にとって眺めてるだけでもいろんなことがわかり、充分にむくわれる」
初めてこれを読んだとき、ぼくは、そうだ、これが「積ん読」のエッセンスだ、と膝を打った。読まないで本棚に本を並べておくことは俗に「積ん読」と呼ばれ、それはたいていはあまりいい意味につかわれないが、ここに書いてあるのは、「積ん読」も捨てたもんじゃない、ということではないか。そうだよ、「積ん読」だって立派に読書のひとつだよね、とけっこう本を積んでおくぼくは、うなずいた。本もね、長く積んでおくと、醗酵していい味がでるのよ、といったりもするぼくなのだ。
「読むともちろんおもしろいが、たまに手にとって眺めてるだけでも」楽しいのは私にもわかる、と言いつつも、最近はKindleで電子書籍を読むことが増えた。青山さんも「文庫版への追記」に「いまはアマゾンのキンドルでぼくもずいぶん読んでいる」と書いている。
キンドルその他の電子書籍の最大の欠点は、しかし、眺めたり触ったり、ができないということではないか。物体としての本は、いまさら言うまでもなく、前から後ろから上から下から、その姿をとくと眺められる。べたべた触ることも、まあ、あまり歓迎はしないが、できる。これは絵本の場合になるが、エリック・カールは、『はらぺこあおむし』や『パパ、お月さまとって!』や『くもさん おへんじどうしたの』では、本を触感で楽しむことを提案してみせた。そういった芸当は電子書籍ではそうとうにむずかしいのではないか。なにをやらかすか、予想がつかないのがコンピューターの今後だから、無理だ、と断言はしないが。
電子書籍は増えても場所を取らない、重くならないというのが引っ越しの多い私にはありがたく何よりもの利点なのだけど、自分の本棚に並んだ本の背を時おり眺める楽しみがなくなってしまうのは寂しい。だから、これからも紙の本と電子書籍を上手く使い分け(買い分け)ていけたらいいなと思う。
買った本
次のお風呂本として買ったのが、椎名誠『活字のサーカス 上』(小学館文庫)Kindle版。
『活字のサーカス 上』には『活字のサーカス』と『活字博物誌』、『活字のサーカス 下』には『活字の海に寝ころんで』と『活字たんけん隊』が収録されている。『活字のサーカス』、『活字博物誌』、『活字の海に寝ころんで』、『活字たんけん隊』はいずれも岩波新書として出ていたのが、今回の文庫化で小学館文庫となった。椎名さんの本を買うのは久しぶり。