井戸川射子『ここはとても速い川』はじめまして

映画『地獄の花園』を観てバカリズム脚本作品面白いかもと思い、『ブラッシュアップライフ』でやっぱり面白いってなって、『侵入者たちの晩餐』で確信。ただ、その後アマプラで観た『殺意の道程』は中盤でなんか違う、となった。井浦新さん好きなのに。8月になってNetflixでまだ観ていない『架空OL日記』の配信が始まったので、早速第1話を観たらいい感じだった。ドラマも映画も配信されているので、このままドラマを観て面白かったら映画も観るつもり。

 

井戸川射子『ここはとても速い川』(講談社文庫)を読んだ。ここ最近は既読の好きな本を読み返すことが多かったので、初読みの作家の本を読んでみようと思い、前からちょっと気になっていたこの本を読むことにした。偶然なのか私の好きな作家は芥川賞作家が多い気がする。現時点で私が好きな作家ベスト3の堀江敏幸、津村記久子、長嶋有は皆そうだ。それなら芥川賞作家の井戸川さんの小説も私に合うのではないかという考えもあった。ただし、『ここはとても速い川』は芥川賞受賞作ではなくて野間文芸新人賞受賞作だけど。

『ここはとても速い川』には表題作と「膨張」という二篇が収録されている。表題作の主人公は児童養護施設で暮らす小学5年生の集という男の子で、同じ施設の年下の男の子ひじりと仲が良い。集には学校にも仲の良い友達がいるし、子供同士でのいじめなどはない。その点ではほっとした。しかし、施設にいる妊娠中の正木先生がひじりに性的な話をして聞かせるといったセクハラをしており、集はそれが気掛かり。

 

「セミをフライにして食べとる」とひじりが、角が丸なってるファーブル昆虫記から顔上げて言った、何回も読んでる本は安心や。シートン動物記は観察が多いのに、昆虫記になると虫は実験ばっかりされてしまう、小さい方は不利やろうな。

 

小さい方は不利。集だってまだまだ子供なのだが、それでもひじりを必死で守ろうとする。「ひじりのノートはちゃんと、食べたいもんのページまで見ましたか」という集の言葉に胸が熱くなった。

 

集は、おばあちゃんからもらったお小遣いでひじりにロッテリアのセットをおごる。その場面が私は好きだ。

 

「僕決めてんねん、もう。いつもここでメニュー見とったやん。究極の組み合わせがもうあんねん」と言ってひじりはレジに向かった、僕も首のタオルを取って入る。絶品ベーコンチーズバーガーのセットでふるポテはバターしょうゆ、バニラシェーキでお願いします、と自信持って言ってる。

 

運ばれてきて、思ったより小さいねんなと言うとひじりは「そんなことない」と言って大事なもんみたいに、静かに一口目をかじる。中のハンバーグは舌と上あごで押しつぶすと肉汁がしみ出て、驚くくらいこしょうが効いてる。シェーキにポテトを嬉しそうに浸すひじりを見て、俺は鼻を中指で弾ませるように叩く。

 

「鼻を中指で弾ませるように叩く」のは、集の中ではシャッターを押したことになるのだ。

そんな感じで「ここはとても速い川」はよかった(正木先生は心底嫌だったけど)のだけど、もうひとつの「膨張」は、暴力絡みの恋愛なんかもあって、こういう話は苦手だなと思ったけれど、メンチカツを握り潰したところでちょっとスカッとした。「膨張」は好きか嫌いかでいうと半々ぐらい。

結局、井戸川さんの作品が私に合うのかどうかは、よくわからなかった。でも、『この世の喜びよ』が文庫化されたら読んでみたいと思っている。

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買った本

石原雄『世界の終わりに柴犬と』(MFC)第4巻Kindle版を購入。現在1〜4巻まで23%ポイント還元になっていて、4巻はまだ買っていなかったので買った。

ハス吉は相変わらずおバカでドジっ子だなあ、などとふふっと笑いながら読んでいたのに、描き下ろしの「ラブレター」で泣いた。

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