インフルエンザが猛威を振るっているという。平日ほとんど家にいる私は大丈夫だろうと思っているのだが、数年前に夫からもらって二人して高熱を出して寝込んだことを思い出したので、夫にくれぐれも気を付けるようにと言っておいた。
津村記久子の『ポースケ』(中公文庫)を読んだ。
読む前にまず思ったのが「ポースケ」って何?ということ。あだ名?それともペットの名前?そういえば、文庫の表紙に鳥の絵が描いてある。この鳥の名前かもしれない。
ポースケは、ノルウェー語で復活祭のことだった。
「あっちの復活祭のことらしいんやけど……、詳しいことはわからんす。でも、私ポースケ行くから有休とるねん!て言いたいっすよね」
「あーそれ言いたいなあ……」
『店主のポースケ研修のためお休みとさせていただきます』という貼り紙を貼ったら、何か、やってやった、という気持ちになりそうだとヨシカは一瞬思ったのだが、うけ狙いで店を休むなどはもってのほかなので頭を振る。
『ポースケ』には、芥川賞受賞作『ポトスライムの舟』に登場するナガセとヨシカが登場する。
主人公はヨシカということになるのだろうか。と言うのも、ヨシカから始まって、ヨシカが営むカフェの店員、客、友人の娘など章ごとに語り手が変わるのだが、語り手となる登場人物たちの共通の場所がヨシカのカフェ「ハタナカ」なのだ。
それぞれが職場や学校、家庭で大なり小なりの問題を抱えている。しかし、他の登場人物の視点ではそんなことはわからない。それが語り手が変わることで明らかになる。
これまで読んだ津村作品はどれも面白く、私にとってはハズレがないので未読の作品を読みたかったのだけど、あらすじに「元彼のストーカー」というワードがあって、それで『ポースケ』を読もうかどうしようか迷った。そういう話を読む気分じゃなかったから。しかし、その「元彼のストーカー」が登場する「コップと意志力」が一番好きな話だった。元彼はものすごく、ものすごーく嫌な奴だけど、今彼が味わい深いいい人で何だかホッとした。
津村さんの小説を読むと、なんだかわからないけど私もちょっと頑張ってみようかなという気持ちになる。職場でのストレスで睡眠障害になっても、気の合わない同僚がいても、学校に嫌な先生がいても、娘の就活が上手くいかなくても、それでも働いて(あるいは学校に行って)日々をどうにか過ごしている。単純な私はそんな登場人物に感化される。具体的に何を頑張るということはないし、実際に頑張るわけではないけど。
買った本
小嶋陽太郎『おとめの流儀。』(ポプラ文庫)購入。
『おすすめ文庫王国2019』で紹介されていて気になったので、書店に行った時に探してみたら帯のコメントを三浦しをんさんが書いていたので、それならと思ってレジに持って行った。