新しいもの、知らないものにはなかなか手が出せない。好きだとわかっているものは安心だ。作家もそう。好きな作家の本は安心して買えるが、初めましての作家の本を買う時は悩むし迷う。
久しぶりに出かけた書店でパラパラと見ていた『おすすめ文庫王国2019』で紹介されていた小嶋陽太郎の『おとめの流儀。』という小説が気になった。探したら見つかった。書棚から文庫を引き出してみると、帯を書いているのは、三浦しをんだった。私の好きな作家、推し作家だ。
ぐふぐふ笑いながら読み、試合シーンに息をのみ、
最後はまばゆくて文字がかすんで見えました。
……涙のせいかもしれません。
帯の文句を読み、『おとめの流儀。』の文庫をレジに持って行った。
主人公のさと子は、中学1年生。小学生からやっているなぎなたを続けるためなぎなた部への入部を決めていた。しかし、なぎなた部の部員は2年生の朝子1人だけ。入部を決めたさと子に朝子は「あと一週間であと三人集めないとなぎなた部廃部になっちゃうんだけど」と告げる。どうにか集まった1年生部員はさと子以外全員初心者。ランニングで早くも1人が脱落しそうになってしまうなど前途多難。その上、部長の朝子がなぎなた部の目標は全国大会ではなく剣道部を倒すことだなんて言うもんだからもう大変。
なぎなた部の活動が主ではあるがそれだけではない。物心ついた時から母親と2人きりで暮らしているさと子は自分の父親がどんな人なのか全く知らない。しかし、母には聞けない。さと子は公園にいる競馬おじさんに父親探しを手伝ってもらう。この謎の競馬おじさんがなかなかよいキャラなのだ。スポーツ小説であり家族小説でもある『おとめの流儀。』。最後はまばゆくて文字がかすんで見える…までは行かなかったけれど、鼻の奥がツンとした。
買った本
津村記久子『婚礼、葬礼、その他』(文春文庫)、『まともな家の子供はいない』(ちくま文庫)、マーガレット・ミラー『殺す風』(創元推理文庫)購入。
相変わらず津村記久子にどっぷりハマっている。未読の文庫本2冊を購入。
そして、実はマーガレット・ミラーの『殺す風』も津村さんの影響で購入を決めた1冊だったりする。
WEB本の雑誌の「作家の読書道」で津村さんが『殺す風』について次のように語っていたのだ。
あ、マーガレット・ミラーも大好きでした。『殺す風』という本がすごくて、そこから全作読みました。釣り仲間の男たちがいて、そのなかの一人で後妻さんと暮らしていた男が失踪するんです。死体も出てこない。それだけの話なんですが、周囲の人たちの様子から目が離せない。地下鉄で読んで、電車を降りた後に改札まで行けなかったんです。駅のベンチに座って続きを読みました。これはすごい作家さんやと思いまして。ミラーはどの本もみんなそうでした。人間をめちゃくちゃよく見て、どんな人間のことも興味深く書く。それが楽しいし読みたいと思わせるのがすごい。善悪を超えるものがあるんです。