『安達としまむら』で百合にハマって7年の私のおすすめ百合小説16選

『安達としまむら』というラノベがきっかけで、私が“百合”にハマって、7年。最近では小説にとどまらず百合漫画も読み漁っています。

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私を百合沼に引きずり込んだ『安達としまむら』

入間人間の『安達としまむら』は、コミカライズされ、今秋、とうとうアニメ化までされました。しかし、実は、私はアニメは観ていません。マンガは、WEB連載で最初の方だけ読みましたが、もう追っていません。

というのも、私の中で、『安達としまむら』と言えば、電撃文庫のイラストを担当しているのんさんが描く安達としまむら、だから。漫画もアニメも可愛いイラストではあるのですが、オリジナルはのんさん、と私の頭に刷り込まれてしまっているのです。

ところが、その電撃文庫の最新巻である9巻のイラストは、のんさんではなくなっていました…。様々な事情があるのでしょうが、何とも残念です。

 

以前の私は、「ラノベ」に特に関心を持ったことがなく、ラノベに対するイメージは、ライトノベルというだけに、軽い内容の小説なのだろうというもので、ラノベに対する偏見のようなものが多少なりともありました。

そんな私が、『安達としまむら』というラノベの存在を知ったのは、ちょうど2巻が出た頃ではなかったかと思います。何しろ7年前のことなので、記憶が定かではないのですが、1巻と2巻を一緒に買ったように思います。『安達としまむら』を読んでみようと思ったきっかけが何であったのかも、今となっては、はっきりと思い出すことが出来ません。

『安達としまむら』を読んだ私は、まず、入間さんの文章に強く惹かれました。私が勝手に想像していたラノベの文章とは違う、純文学的なものを感じたのです。

さらに、その内容に、久しぶりにキュンキュンしてしまったのです。恋愛小説や恋愛漫画にキュンとすることがなくなっていた私にときめきを取り戻させてくれたのが、『安達としまむら』、そして“百合”というジャンルでした。

以来、百合小説を探しては読むという百合沼にハマって、現在に至っています。

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おすすめ百合小説16選

そこで、今回は、百合小説読み歴7年の私が、おすすめしたい百合小説16作品を紹介します。

ここで言う百合小説は、私が百合だと思う小説です。

なお、作品の内容紹介には多少のネタバレを含みます

『安達としまむら』入間人間

まずは、入間人間『安達としまむら』(電撃文庫)

現在9巻まで刊行されているシリーズ作品。

 

安達としまむらは、同じ高校に通う女子高生。1年生の時に、二人とも授業をサボって体育館の二階にいたことがきっかけで、何となく一緒に過ごすようになります。最初はごくごく普通に会話をして、卓球なんかをして遊んでいたのに、安達がしまむらを特別な存在と意識するようになると、安達の言動が一気に変わってしまいます。今、改めて1巻を読み返すと、安達がしまむらと普通に会話できていることに驚きます。

 

1巻で、安達は、しまむらとキスをする夢を見るのだけれど、「私はそういうあれじゃない」と自分の中で否定し、次のように結論づけます。

 

私は、しまむらに優先されたいだけだ。
しまむらが友達という言葉を聞いて、私を最初に思い浮かべて欲しい。
それぐらいの、多少の独占欲めいたものがあるのは認めている。
『安達としまむら』入間人間(電撃文庫) p.106

 

しかし、この後、安達のしまむらに対する想いは急加速で膨れ上がり、それに伴って、独占欲も「多少の独占欲」などという可愛らしいものではなくなっていきます。

安達としまむらの関係に転機が訪れるきっかけの1つとなるのが、3巻で登場するしまむらの小学生の時の友達である樽見という女の子。この樽見も、しまむらに対して特別な想いを抱いており、会わなかった時間を取り戻そうとするかのようにしまむらに急接近します。

そして、5巻。しまむらが樽見と一緒に(正確にはしまむらの妹と謎のキャラ・ヤシロも一緒)祭りにいるのを目撃した安達は、嫉妬や不安や苛立ちを電話でしまむらにぶつけてしまう。実に文庫で4ページ半が全て安達のセリフで埋め尽くされています。

ここまでの9巻のうち、私は、5巻が一番辛かった!一番辛いと言うと、まるで他にも読むのが巻があるみたいだけれど、ありません。

でも、5巻の、あの電話で、しまむらから面倒くさいと言われて、安達が我に返ることが出来たからこそ、安達としまむらの今があるのだと思います。

そして、6巻以降は、告白、付き合う、修学旅行…とキュンキュンするシーンやシチュエーションがあちこちに散りばめられていて、もうニヤニヤが止まりません。

最新巻の9巻は、特別編ということで、『安達としまむら』と言うよりも、『日野と永藤』になっています。安達としまむらの同級生である日野と永藤(どちらも女の子)は、幼馴染で、1巻から登場するあだしまの主要キャラ。日野と永藤も、いや、むしろ日野と永藤の方が最初っから百合百合しい。安達の暴走が辛かった5巻でも、日野と永藤のエピソードに癒され、いっそのこと『日野と永藤』の方がいいんじゃないかと思ったこともありました。

しかし、今の私は、安達としまむらを欲しているので、10巻こそは安達としまむらメインであって欲しいと願っています。

『安達としまむら』は、百合沼に引きずり込まれること間違いなしの百合小説です。

『少女妄想中。』入間人間

続いて、入間人間『少女妄想中。』(メディアワークス文庫)

『安達としまむら』の入間さんの小説に、『やがて君になる』の仲谷鳰さんのイラストという、私にとっては夢のような組み合わせ。ちなみに、仲谷さんのイラストは、表紙と巻頭の1ページ(カラー)。

 

『少女妄想中。』には、「ガールズ・オン・ザ・ラン」「銀の手は消えない」「君を見つめて」「今にも空と繋がる海で」という4編の短編小説が収録されています。

連作と言いたいのだけれど、「銀の手は消えない」の扱いが私にはちょっと難しい。でも、「銀の手は消えない」も間違いなくリンクしている。そして、4編とも百合小説です。

 

4編の中で、私が一番好きなのは「君を見つめて」。

仲谷鳰さんが描いた表紙のイラストは、おそらく「君は見つめて」に出てくる叔母と姪。

以前感想を書いた時に引用したのと同じ場面を、ここでもやはり引用します。

 

「……好きになる相手って、選べるんですか?」
ふと気になったことを、叔母にぶつける。
一呼吸置いて、叔母が答えた。
「選べないよね、普通」
叔母が肩を落とすようにして笑う。
どちらの声も、水の底に沈むように深く響いた。
「君を見つめて」(『少女妄想中。』入間人間(メディアワークス文庫) p.249)

 

最後の「今にも空と繋がる海で」には、二組のカップルが登場します。そのうちの一組が、「君は見つめて」の叔母と姪なのですが、これまたニヤニヤが止まりません。

それにしても、ラストの締めの切なさ、美しさ。入間さんの文章のおかげで、ラノベに対して私が勝手に持っていたイメージが、完全に変わりました。軽妙さと重厚感の絶妙なバランスの文章で描かれた百合小説なんて、もう最高としか言いようがありません。

『やがて君になる 佐伯沙弥香について』入間人間

入間人間『やがて君になる 佐伯沙弥香について』(電撃文庫)。またしても、入間作品。

全3巻で完結しています。

 

ずばりタイトルそのまま、仲谷鳰の漫画『やがて君になる』のノベライズで、メインとなるのは漫画の主要キャラ・佐伯沙弥香。いわゆるスピンオフです。

原作漫画では、小糸侑と七海燈子のカップル「燈侑(侑燈)」だけでなく、燈子と沙弥香の「燈沙」、あるいは、侑と沙弥香の「侑沙」といった組み合わせも人気です。

ちなみに、私は王道の燈侑派なので、漫画の結末には大大大満足しています。しかし、沙弥香にも素敵な人と出会って、恋をして欲しいという思いがありました。

そんな私のようなやが君読者の願いを叶えてくれたのが、入間人間さんの『やがて君になる 佐伯沙弥香について』なのです。

沙弥香が、侑と燈子の2人と決定的に違うのは、高校に入学する前に人を好きになる経験があったという点。そして、もう一つ。侑と燈子の場合、好きになった相手がたまたま同性だったのだけれど、沙弥香の恋愛対象は幼い頃から同性であるという点。

 

『やがて君になる 佐伯沙弥香について』の1巻では、漫画では描かれていない沙弥香の小学生時代の淡い恋のようなものだったり、漫画で少しだけ描かれている中学時代の悲しい結末に終わった恋の前後をより詳細に描いています。

2巻は、漫画でもメインの高校時代を沙弥香の視点で描いているので、漫画とはまた少し違った沙弥香、燈子、侑を知ることが出来ます。

 

小学生の時に出会ったあの子を忘れてはいけない。
中学生の時に出会った先輩を忘れることはできない。
高校生になって出会った七海燈子のことは生涯忘れないだろうという確信がある。
そして、もう一人。
小糸侑という一年生は、高校の中で一番明確に意識した後輩だと思う。
「恋と、小糸」(『やがて君になる 佐伯沙弥香について(2)』入間人間(電撃文庫) p.11)

 

そして、最終巻の3巻で沙弥香がようやく幸せな恋をする大学時代を描いています。

漫画を読んで佐伯沙弥香(の恋)についてもっと知りたいという人にはもちろん、小説だけでもその世界観を十分に楽しむことが出来る内容となっています。

 

そして、なんと入間人間さんと仲谷鳰さんが再びタッグを組みます!

少女たちの別れと再会。鮮烈な想いが弾ける作品集。

電撃文庫の12月の新刊『エンドブルー』は、入間人間(著)、仲谷鳰(イラスト)。発売日は、12月10日。

『マウス』村田沙耶香

村田沙耶香『マウス』(講談社文庫)

文庫購入当時の帯ですが、帯にあるように、村田沙耶香さんは、第155回芥川賞を『コンビニ人間』で受賞した芥川賞作家です。

 

純文学か、エンタメ小説か。その境目が曖昧であるように、百合小説であるかどうかもまた曖昧なところがあります。

作家あるいは出版社が、「百合小説」と銘打ってくれていれば、こちらも遠慮なく百合小説として紹介する事が出来るのですが、そうではないものがほとんどで、それらを百合小説と呼んで良いものかどうか迷う部分があります。

しかし、先に断ったように、ここでは、私が百合だと思う小説百合小説とします。

 

『マウス』は、私の中では百合小説。しかも最高の百合小説です。

主人公の田中律は、小学5年生になったばかりの女の子。同じクラスになった塚本瀬里奈は、全く喋らず、何かあると泣く子で、周囲から異端者扱いされていた。いわゆるスクールカーストの中で、律は、真ん中よりも下の真面目で大人しい女子のグループに属していて、さらに下の「きもい」とされているグループに落ちないよう、細心の注意を払いながら日々を過ごしていました。

ある日、律は、瀬里奈が人気の無い旧校舎のトイレの掃除用具入れの中に閉じこもっているのを見つけて、彼女に声をかけます。瀬里奈は、トイレの掃除用具入れの中で「灰色の部屋」にいることを想像して、気持ちを落ち着けているのだという。律は、親切心からではなく、優越感からくる意地悪な気持ちで、嫌がる瀬里奈に『くるみ割り人形』を読み聞かせました。すると、その出来事をきっかけに瀬里奈は激変。彼女は、『くるみ割り人形』のマリーについての想像を膨らませ、自分をマリーだと思い込むことで言動までも変えてしまったのです。

以前とすっかり変わった瀬里奈は、元々背が高く細身であったことからモデルみたいだと注目され、クラスの上位グループに属する人気者の早野さんという女子からよく話しかけられるようになります。しかし、瀬里奈は、早野さんに話しかけられても上の空。瀬里奈の興味の対象は、律だけなのです。

 

前半は小学生時代。後半になると、律が大学生になっていて、小学校以来、喋ることもなかった瀬里奈に会い、再び交流を持つようになるのですが、私は、どちらかというと後半部分が好きです。

これも以前感想を書いた時に引用しましたが、やはり、ここだと思う箇所は変わらないので、同じところを引用します。

 

「律のほうが、馬鹿だよ。律なんて大嫌い。私、嫌いな人っていないの。誰のこともどうでもいい。でも律のことは大嫌い」
『マウス』村田沙耶香(講談社文庫) p.226

 

瀬里奈にとって、律以外の人間は好きでも嫌いでもない、どうでもいい存在なのです。

そして、それこそが、私のツボとなる百合ポイントなのです。瀬里奈の場合はかなり極端ですけど、たとえ恋愛感情ではなくても、その人さえいれば他の人はいらないという強い想いに、私はグッときてしまうのです。瀬里奈には、『安達としまむら』の安達に似たものを感じます。

『あまいゆびさき』宮木あや子

宮木あや子『あまいゆびさき』(ハヤカワ文庫)

実は、初めて呼んだ宮木さんの小説は、『あまいゆびさき』ではなく、このあと紹介する『雨の塔』。ドラマ化された『校閲ガール』のイメージ(ただし、私はドラマをちょっと観ただけな上に原作は未読です。)とは違う、しっとり(もしくはねっとり)とした雰囲気の漂う百合小説で、その世界観に引き込まれました。

そんな『雨の塔』を書いた宮木さんの百合小説なら間違いないと思って、ずっと読みたかったのが『あまいゆびさき』でした。しかし、文庫派の私が待てども待てどもなかなか文庫化されませんでした。

『あまいゆびさき』の単行本は、Yuri‐Hime Novelから出ていたので、もしかしたらこのまま文庫化されないのかもしれないと諦めかけていたところ、無事にハヤカワ文庫になりました。

 

幼い頃に出会った真淳と照乃。二人は、ひとつのチョコレートを分け合う。互いの舌を絡めて。しかし、真淳の引っ越しで二人は離れ離れになります。

中学生になった真淳が、同級生の男子に無理やり迫られ嫌がっていると、その様子を見ていた他校の女の子が声をかけ助けました。真淳は、その女の子が照乃であると気付いて名前を呼ぶと、照乃は走り去ってしまいます。

その後、高校に入学した真淳は、同じクラスに照乃の姿を見つけるのですが、真淳が声をかけても無視をする照乃。貧しい母子家庭で育ち、幼い頃から母親から虐待されていた照乃は、母親が成金の男性と結婚したため、真淳と同じ私立高校に入学することが出来たのでした。

真淳と照乃は、互いに幼い頃からずっと好きだったのに、誤解し、すれ違い、傷つけ合った後に、ようやく想いを伝え合い結ばれます。

 

再び涙が溢れて、真淳は両手で顔を覆う。快楽の余韻の海に溺れながら、枯れない指輪を交換したいと思った。今、この世界には様々な人がいる。その中でふたりで手をつないで生きてゆくために。
『あまいゆびさき』宮木あや子(ハヤカワ文庫) p.264

 

この『あまいゆびさき』は、今回の「おすすめ百合小説16選」の中で、オブラートに包まない直球のエロ表現がある作品なので、おすすめと言っておきながら、そういうのが苦手な方にはおすすめしません。さらに真淳と照乃は二人とも母親から虐待を受けているので、そういうのが苦手な方にもおすすめは出来ないかもしれません。

しかし、結末を言ってしまうと、ハッピーエンドなので、途中はともかく読後感は良いです。

『雨の塔』宮木あや子

宮木あや子『雨の塔』(集英社文庫)

陸の孤島のような岬に建つ全寮制の女子大には、資産家の娘だけが入ることが出来る。

同じ寮で暮らす矢吹、小津、三島、都岡の4人。矢吹と小津、三島と都岡がそれぞれ同室。

三島と都岡は中高も同じ。都岡の家は裕福ではないのだけれど、三島と仲が良い友人ということで、お世話係のようになっている。

 

まだ半年も経っていないというのに、今では果てしもなく遠い過去になってしまったけれど、この世界に都岡と三島以外の者がいたとき、都岡は三島以外の者と口をきくことは許されていなかった。二人が出会った頃からそういう世界が続いていたため、あるときまではちっとも不思議に思わなかった。
『雨の塔』宮木あや子(集英社文庫) p.73

 

嬉しそうに微笑んで三島は都岡に抱きつく。髪の毛からは桃の匂い。笑いながらもう一度鏡を見たら、自分と目が合う。いつか都岡のことも、この鞄みたいにつまらないもののように思える日が来るのだろうか。
『雨の塔』宮木あや子(集英社文庫) p.102

 

矢吹と三島、小津と都岡がそれぞれに出会って、互いのルームメイトには内緒で交流を始めます。いい雰囲気で、それぞれがカップルになるのでは、と思ったところで…。

 

陸の孤島の全寮制女子大というシチュエーションもあって、『あまいゆびさき』とは違う、耽美な雰囲気が漂う百合小説。

『鹿乃江さんの左手』青谷真未

第2回ポプラ社小説新人賞・特別賞受賞作の『鹿乃江さんの左手』青谷真未(ポプラ文庫)

「からくさ萌ゆる」「闇に散る」「薄墨桜」という女子高を舞台にした3つの短編を収録した連作短編集です。

 

女子校が舞台というだけで、百合小説としての条件は十分なわけですが、百合小説と言い切れるのは、最後の「薄墨桜」

養護教諭のハルカは、冴木という生徒から「私は、先生のことが好きなのかもしれません」と告げられる。その出来事から、ハルカは、今は教師として勤める女子校の生徒だった頃、想いを寄せていたクラスメイトとの苦い思い出を思い出します。

ある日、ハルカの前に現れた見覚えのない生徒は、自らを学校に棲んでいるという魔女だと言い、ハルカが望むと記憶を消せる薬をくれました。自分のことを好きだという記憶を消そうと、ハルカは冴木に薬を飲ませる。その後、冴木はハルカがいる保健室に姿を見せなくなるのですが…。

 

とりあえず十代の女の子とやらとずっと一緒にいられるよう努力するところから始めませんか。
「薄墨桜」(『鹿乃江さんの左手』青谷真未(ポプラ文庫) p.322)

 

学園ミステリーの雰囲気を漂わせた先生と生徒の甘酸っぱい百合小説。

「熱帯夜」江國香織(『号泣する準備はできていた』収録)

直木賞受賞短篇集・江國香織『号泣する準備はできていた』(新潮社文庫)に収録されている「熱帯夜」は、千花と秋美という大人の女性の恋愛を描いた短篇。

恋人たちのある夜を描いた、文庫で16ページほどのあっという間に読み終えてしまえる短篇小説なのですが、私がこれまで読んだ中で最高の社会人百合短篇です。

 

昔から江國香織さんの小説(エッセイも)が好きで、文庫化された作品のほとんどを読んでいます。初めて「熱帯夜」を読んだ時は、さらりと読んだと思うのですが、現金なもので、百合にハマってから再び読んだら、「何これすごい!」となり、何度も読み返すようになりました。

 

「あいしてる」
と言って、私の膝に手を置いてすばやく体重を移し、唇にまっすぐ力強くキスをした。つめたくてやわらかい唇。
「こんなに一緒にいるじゃない」
私はちは見つめあう。見つめあったまま、私は、
「知ってるわ」
と、こたえた。こたえても、まだどちらも視線をそらさない。あいしてるあいしてるあいしてる、と、秋美が目だけで伝えて寄越す。臆面もなく、きちんと。私が嬉しくなって笑いだすのを待っているのだ。そして、そのとおりに私は笑いだしてしまう。
「熱帯夜」(『号泣する準備はできていた』江國香織(新潮社) p.52)

 

「熱帯夜」を読んでからというもの、江國さんが書く長編の百合小説を読みたいとずっと思っています。

 

昨年末に読んだ『なかなか暮れない夏の夕暮れ』に、主人公ではないけれど、主要な登場人物として、さやかとチカという、かなり大人の女性同士の恋人が登場していて、その二人もとても素敵に描かれていました。

『しずるさんと偏屈な死者たち』など「しずるさんシリーズ」上遠野浩平

上遠野浩平『しずるさんと偏屈な死者たち』、『しずるさんと底無し密室たち』、『しずるさんと無言の姫君たち』、『しずるさんと気弱な物怪たち』(星海社文庫)

しずるさんシリーズと呼ばれるシリーズものです。

タイトルからミステリーであることは、何となくわかると思うのですが、帯に「とってもミステリーで、ちょっぴり百合。」と書いてあるように、ちょっぴり百合でもあります。

 

原因不明の病気で入院しているしずるさんに会うために山の上にある病院に通うよーちゃん。よーちゃんは、複雑怪奇な事件に興味を示すしずるさんのために様々な事件の話をします。

そして、しずるさんは、よーちゃんの話や、よーちゃんが集めた資料を手掛かりに事件の謎を解いてしまうのです。しずるさんシリーズは、いわゆる安楽椅子探偵もの+百合なのです。

 

「よーちゃん、地獄に垂らされた蜘蛛の糸は、何人摑まっても切れないのよ」
「あれ、そうなの?」
「そうよ。切れるのは、その中の誰かが下にいる者に “これは自分の物だから下りろ” と言ったときなのよ。よーちゃんが先頭で糸に摑まっていたら、きっと地獄中の人間が助かっちゃうわね」
「私は、他の人はどうでもいいわ。しずるさんが一緒なら」
『しずるさんと気弱な物怪たち』上遠野浩平(星海社文庫) p.105

 

 

しずるさんシリーズについては、以前も書いたことがあるのですが、新刊が出るのを今か今かと待っているのですが、どうもその気配は無いみたいです。

『ミス・シャーロック』木犀あこ

木犀あこ『ミス・シャーロック』(集英社)

Huluオリジナルドラマのノベライズです。

 

シリアから帰国した医師の橘和都は、シャーロックと呼ばれる日本人女性の捜査コンサルタントと出会う。

シャーロック・ホームズとジョン・ワトスンが、どちらも女性で、現代の日本にいたら…という設定。ドラマでは、シャーロックを竹内結子さん、橘和都を貫地谷しほりさんが演じています。

以前、感想に「ドラマは観てないけど」と書いたけれど、未だにドラマは観ていません。いつか観たいと思ってはいるのですが。

 

 

しかし、ノベライズのみでもその世界観は十分に楽しめました。

 

「いいよ、和都。あんたになら撃たれてもかまわない。和都は私の友達———初めてできた———私の友達」
『ミス・シャーロック』木犀あこ(集英社) p.314

 

行動を共にするうちにシャーロックと和都の絆は強くなり、やがて互いにかけがえのない存在になります。決してベタベタした関係ではないのですが、二人の熱すぎる友情に、深い愛を感じます。

『シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱』高殿円

シャーロック・ホームズの女性化現代版・高殿円『シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱』(ハヤカワ文庫JA)

舞台は、2012年のロンドン。アフガン帰りの軍医ジョー・ワトソンは、名探偵シャーリー・ホームズとフラットシェアをすることに。

ホームズとワトソンを女性キャラにして、さらに舞台を現代にした小説です。

ミステリー小説として楽しむよりも、シャーリーとジョーの関係に百合みを感じたので、百合(っぽい)小説として楽しみました。ちなみに、私は本家のシャーロック・ホームズにはBLみを感じています。

 

「心がないなんてうそ。シャーリーはやさしいよ。そう落ち込まないで」
彼女の肩に寄りかかった。一瞬だけ肩が揺れて、それから私の居心地の良い枕になる。
『シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱』高殿円(ハヤカワ文庫JA) p.201

 

『探偵が早すぎる』井上真偽

井上真偽『探偵が早すぎる』(上)・(下)(講談社タイガ)は、まずミステリー小説として面白く、さらに百合小説としても楽しめるという、私にとって最高の小説。

 

5兆円の遺産を相続した女子高生の一華は、親族である大陀羅一家から命を狙われている。一華のそばにいるのは、家政婦の橋田ただ一人。

一華を守るため、橋田は知り合いの探偵・千曲川光に依頼をします。千曲川は、事件が起きる前にそのトリックを見破り、事件を未然に防ぐという風変わりな探偵。あの手この手で一華を殺そうとする大陀羅一家のトリックを千曲川が次々と看破していきます。

 

一華は幸福な気持ちで助手席に座り直すと、再びシートベルトを締めた。そして腕を横に伸ばし、橋田の手を上からそっと握る。橋田の手は白くて、細くて、柔らかくて———そしてとても、温かい。
『探偵が早すぎる(下)』井上真偽(講談社タイガ) p.297

 

ドラマ化もされましたが、原作の雰囲気と違って、コメディ色が濃く、百合みが薄かったです。ただ、ドラマはドラマで面白かったですけど。

『探偵の探偵』松岡圭祐

『探偵の探偵』Ⅰ〜Ⅳ松岡圭祐(講談社文庫)。

探偵を追う“対探偵課”の探偵・紗崎玲奈。玲奈は、中学生だった妹をストーカーに惨殺された過去を持つ。妹の居場所を突き止め、犯人に知らせたのは、探偵だった。

峰森琴葉は、同居していた姉の結婚を機に一人暮らしをする必要に迫られ、玲奈のいる探偵事務所の求人に応募、玲奈の助手として採用される。

玲奈は、妹の面影を重ねてしまいそうになる琴葉を最初は拒絶するのですが、やがてその存在を受け入れます。

 

「琴葉は悪くない。わたしだって琴葉を失いたくない。二度と離れたくない」
『探偵の探偵Ⅳ』松岡圭祐(講談社文庫) p.277

 

北川景子さん主演でドラマ化されましたが、観ていないのが悔やまれます。クールビューティーな北川景子さんに玲奈役はぴったりすぎるほどのハマり役だったでしょうから。

『キャロル』パトリシア・ハイスミス

ケイト・ブランシェット主演で映画化され話題となったパトリシア・ハイスミス『キャロル』(河出文庫)

デパートのおもちゃ売り場でアルバイトをする19歳のテレーズ。そんな彼女の前に現れたのは、年上の美しい人妻キャロル。

二人の出会いのシーンからしてもう完璧で最高に美しい。

 

ふたりは同時に目を合わせた。テレーズは開けていた箱からふと顔を上げ、女性はテレーズのほうに頭を巡らせたので、まともにお互いの目をのぞきこむことになった。すらりと背の高いブロンドの女性が、ゆったりとした毛皮のコートを優雅にまとい、コートの前を開けてウエストに片手をあてている。瞳はほとんど透明といってもいいほどの薄いグレーだが、それでいて光や炎のように強烈な印象を与える。テレーズはその瞳にとらわれて目をそらすことができずにいた。正面にいる客が質問を繰り返しているのがわかってはいたが、口を利くこともできずに立ちつくしていた。女性もテレーズを見ていたが、買い物の目的をどこかに置いてきたような、魅了されたような表情を浮かべている。ふたりのあいだには何人もの店員がいたが、きっと自分のところへ来るとテレーズは信じて疑わなかった。やがて女性がゆっくりとカウンターに向かって歩きだすと、一瞬止まっていたテレーズの心臓は遅れを取り戻すように乱れ打ち、彼女が近づくにつれて顔が火照ってきた。
『キャロル』パトリシア・ハイスミス(河出文庫) p.50〜51

 

ラブロマンスのつもりで読んでいたら、終盤のサスペンス的な展開にかなりハラハラさせられました。さすがサスペンスの巨匠と思わず唸りました。『太陽がいっぱい』も『見知らぬ乗客』も読んではいませんが。

 

サスペンスの巨匠と書きましたが、あとがきを読むと、ハイスミスは小説をカテゴライズすることに意味を感じていなかったようです。しかし、『見知らぬ乗客』がヒットし、彼女の意に反してサスペンス作家として評価されることになります。ハイスミスは『キャロル』を『見知らぬ乗客』と同じ出版社から出したいと考えていたのですが、当時はレズビアンの恋愛を扱った小説ということで出版社に拒絶され、クレア・モーガンという別名義で他の出版社から出すことになったのだそうです。

『荊の城』サラ・ウォーターズ

サラ・ウォーターズ『荊の城』(上)・(下)(創元推理文庫)は、購入当時の文庫の帯にあるように2004年度の『このミステリーがすごい!』海外編 第1位に選ばれたミステリー小説です。

このミス1位の作品ということは知っていましたが、当時はあらすじを読んでもあまり心惹かれなかったのでスルーしていました。しかし、百合にハマった後、百合小説好きなら一度はサラ・ウォーターズの小説を読んでおきたいと思い、購入しました。

私が『荊の城』を購入した当時は、絶版寸前だったのか、ネット書店では上巻が在庫なしの絶版扱いでした。しかし、2016年に韓国で映画化された影響なのか、現在は上下巻とも在庫がありますし、電子書籍化もされています。

 

さて、『荊の城』ですが、いざ読んでみると、百合目的であったのを忘れてしまう面白さでした。

舞台は、19世紀半ばのロンドン。掏摸を生業にしている17歳の少女スウは、詐欺師に誘われ、モードという令嬢から財産を奪い取る計画に加担します。

ところが、モードの侍女として仕えるうちにスウはモードに惹かれていきます。ミイラ取りがミイラになるわけです。

 

あたしはモードを———眼の見えない盗人は金のありかを感じ取れるというが———あたしもモードを感じた。壁の向こうから。知らないうちにあたしとモードの間に、糸のようなものが張られたかのようだった。その糸はあたしを引き寄せた。モードがどこにいても。それはまるで———
まるで、恋のように。
『荊の城 上』サラ・ウォーターズ(創元推理文庫) p.203

 

しかし、モードもまたスウに惹かれるのです。そこからは怒涛のストーリー展開で、もうページをめくる手が止まりません。流石このミス1位。

『スチーム・ガール』エリザベス・ベア

最後におすすめするのは、エリザベス・ベア『スチーム・ガール』(創元SF文庫)。百合SFです。

私が好んで手に取らないジャンルが、ホラーとSF。子供の頃から怖いのがとにかく苦手で、例え最高の百合小説と言われても、ホラーだったら読むことはないと思います。SFには、小難しくてよくわからないというイメージがあって、やはり苦手ですが、ホラーと違って読めないというほどではありません。

SFの『スチーム・ガール』を読んだのは、どうやら百合小説であるらしいと知ったから。心配していたSF用語の連発はなく、甲冑機械が出てくる以外はむしろこれがSF?と思ってしまうほど。

 

カレンが働く高級娼館モンシェリに、ある夜インド人の少女プリヤが逃げ込んで来た。プリヤは、町の有力者バントルが営む劣悪な環境の娼館で働かされていました。バントルは、プリヤをかくまったモンシェリを敵視し、卑劣な手段でモンシェリを叩き潰そうとする。プリヤに強く惹かれ、愛するようになったカレンは、プリヤを守るため甲冑機械をまとってバントルに立ち向かいます。

 

プリヤが心からわたしを信じ、わたしの肩に頭をあずけて眠る日が、いつかくるだろうか。短い時間でいいから、頭を並べて眠ってくれる日が。いきなり起きて、いらいらと歩きまわったりせずに。
『スチーム・ガール』エリザベス・ベア(創元SF文庫) p.258

 

私のようにSF小説はちょっと苦手という方にも比較的読みやすいのではないかと思います。

最後に

今回おすすめした16作品以外にも、恩田陸さんの『蛇行する川のほとり』や三浦しをんさんの『きみはポラリス』に収録されている「夜にあふれるもの」、綿矢りささんの『ひらいて』など、後になって思い浮かぶ作品もありましたが、長々と書いて力尽きたので、今回はここまでとします。

三浦しをんさんの『ののはな通信』、綿矢りささんの『生のみ生のままで』の文庫化が待ち遠しい!

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