『長嶋有漫画化計画』など長嶋有の本を買う

未読の本を読むのはもちろん楽しいけれど、好きな本を読み返すのもまた楽しい。というわけで、もう何度目かわからない堀江敏幸『いつか王寺駅で』(新潮文庫)と3度目の長嶋有『ねたあとに』(朝日文庫)を続けて読んだ。

やはり、いい。どちらもいい。しかし、『ねたあとに』は、こんなに面白いのに絶版なのだ。しかも電子書籍化もされていない。なんてこった!

 

 

高校野球の音が壁越しに聞こえ、夏休みが終わるという気持ちがいやました。子供のとき、高校野球の「音」は、まだ夏休みの只中を意味していた。大相撲中継の「音」は、遊び終えて家に帰ってくるときの気持ち。大人になると、世界の「音」と抱く気持ちとがズレていく。

『ねたあとに』長嶋有(朝日文庫)

 

久しぶりに読んだ『ねたあとに』の余韻に浸っていたら、もっと長嶋有を…と無性に長嶋有を読みたくなった。今度は未読のものが読みたい。とは言え、文庫化された作品はほとんど買って読んでいる。そう思って本棚を見てみたら、河出文庫の『安全な妄想』がない。はて、買って読んだ記憶があるようなないような。

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買った本

というわけで、文庫化されていなくて、この先も文庫化されないのではないかと思われる『長嶋有漫画化計画』(光文社)と『本当のことしかいってない』(幻戯書房)、そして買ったつもりだった『安全な妄想』(河出文庫)を買った。『本当のことしかいってない』は古書。

 

『長嶋有漫画化計画』の分厚さにビビる。

『長嶋有漫画化計画』はタイトル通り、漫画家が長嶋有の小説を漫画化したもの。私は長嶋有の小説やエッセイが好きなのであって、漫画化されてもなあ…と思ってスルーしていた。

ところが、『ねたあとに』を読み返した後にブルボン小林(長嶋有)さんのこんなツイートを見てしまい、購入を決めた。

 

 

『ねたあとに』を漫画化したのはフジモトマサルさん。久呂子さん以外の登場人物は皆ネコ科の動物(?)になっている。

菅田将暉と有村架純のW主演映画『花束みたいな恋をした』で主演の二人が暮らす部屋の本棚に『長嶋有漫画化計画』が並んでいるらしいと知って、YouTubeで公開されている予告動画をあれこれ観てみたら、そのうちのひとつで見つけた。薄暗い部屋の本棚が引きで映っていて、他の本は何が何だかわからないのに『長嶋有漫画化計画』の厚くて真っ赤な背の存在感。

『長嶋有漫画化計画』を読み始めてすぐに、こんな小説あったかな?と思ったのが萩尾望都さんが漫画化した「十時間」。「十時間」は、『祝福』に収録されている短編小説。もちろん私は『祝福』の文庫を持っているし、読んでいる。ただし、初読の時にあまり響かなかった(「ジャージの一人」を読んで満足した)ので、それきり読み返していない。そのうち読み返そうと思う。

長嶋有の小説の中でも特に好きな『夕子ちゃんの近道』を漫画化したのは、カラスヤサトシさん。「長嶋有による作品ポイント解説」に「原作に美しい何かを受け止めた人(いるのか?)は違和感を抱くかもしれないが、僕にはもう、これ以外の絵は浮かばない」とあり、私はまさに違和感を抱いたのだけれど、読み終えた時にはこれはこれでありかもと思った。

『パラレル』は好きで何度か読んでいるのに、うめさんが漫画化した『パラレル』を読んだら、こんなBLっぽかったっけ?と不思議に思った。自分の記憶力に自信を失いそうになったけれど、作品ポイント解説に、うめさんから「BLにしましょう」という提案があり、そうなったというようなことが書いてあってホッとした。

『長嶋有漫画化計画』の漫画を読んだら、「十時間」だけでなく他の小説も読み返したくなった。

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