アイネクライネナハトムジーク

book170824

夏が来るたびに毎年言っているように思うけれど、ついつい口にしてしまう。「今年の夏は暑い」。

伊坂幸太郎の『アイネクライネナハトムジーク』(幻冬舎文庫)を読んだ。

『アイネクライネナハトムジーク』は、「アイネクライネ」ではじまり、「ナハトムジーク」で終わる6つの短編からなる連作短編集。

最初の「アイネクライネ」は伊坂さんにしては珍しいわりとストレートな恋愛もの。恋愛ものと言っても、描かれているのは出会うところまでなんだけれど。この「アイネクライネ」を書くきっかけについてはあとがきに書いてあるけれど、斉藤和義さんから依頼があったからなのだそうだ。

それぞれの短編で登場人物がリンクしているというところは伊坂作品らしい。しかも、そのリンク加減が絶妙なのだ。

登場人物の中に織田一真という『チルドレン』の陣内を彷彿とさせる男がいる。陣内同様いちいち言うことが鬱陶しいのだけど、どこか憎めないキャラだ。

「アイネクライネ」で主人公の佐藤が彼女がいないことについて「なかなか、出会いがなくて」と言うと、友人の織田は「俺、出会いがないって理由が一番嫌いなんだよ。何だよ、出会いって。知らねーよ、そんなの」と言う。

「ようするに、外見が良くて、性格もおまえの好みで、年齢もそこそこ、しかもなぜか彼氏がいない女が、自分の目の前に現われてこねえかな、ってそういうことだろ?」
違う、と言いかけて、僕は言葉に詰まる。まあ、言われてみればそうかも、と思わないでもなかった。
「そんな都合のいいことなんて、あるわけねーんだよ。しかも、その女が、おまえのことを気に入って、できれば、趣味も似ていればいいな、なんてな、ありえねえよ。どんな確率だよ。ドラえもんが僕の机から出てこないかな、ってのと一緒だろうが」

あ、陣内っぽい。そう思いながら読んだ。

軽妙で笑いがあって、グッとくるところもあって。すごく私好みの伊坂作品だった。

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