古本屋で「ぱっぱっぱっ。」「うんうん。」(穂村弘『整形前夜』)

けらえいこさんの漫画『あたしンち』の新連載が昨年12月から始まったとか。『あたしンち』にハマった時、他の漫画も読んでみたいと思いコミックエッセイ『セキララ結婚生活』(講談社文庫)を読んだのだけど、その中に旦那さんが本屋やコンビニ、レンタルビデオ屋で寄り道をするようになるというエピソードがある。家で仕事をしているけらさんは日中ずっとひとり。一方、会社勤めの旦那さんはずっと大勢の中にいる。朝から誰とも喋っていないけらさんと家に帰ってようやくひとりの時間が持てると考えている旦那さんとの間に温度差ができていたという話なのだが、それを読んで私はハッとした。ひとりでいる時間の多い私はひとりの時間の大切さに鈍感になっているんじゃないかと。夫婦にもいろいろあるし、相手に構ってもらえるのが嬉しいという人もいるだろうけど。

 

穂村弘の『整形前夜』(講談社文庫)を読んだ。

これまでのところ、ほむほむのエッセイはどれを読んでも面白くてはずれがない。少なくとも私にとっては。面白そうだなと思うタイトルのエッセイを出版された順番など関係なく手当たり次第に読んでいるので、前に読んだエッセイでは独身だった穂村さんがいきなり結婚していて「いつの間に?」と驚いたりする。

『整形前夜』に「引っ越しと結婚と古本屋」というエッセイがある。

中央線の沿線には夜遅くまでやっている良い古本屋が多いという理由で引っ越した穂村さんは奥さんと一緒に毎晩幾つもの古本屋をまわる。

自分のテリトリー内に新しい古本屋を見つけ、それが良い古本屋だった時、穂村さんはその喜びを奥さんに伝える。

 

即飛び込んで、棚をみる。
いい。
いいよ、これは、と思う。
店主らしきひとの手をとって、ありがとうありがとう、と云いたいくらいだが、不気味に思われるだろうからやめておく。
だが、喜びを抑えきれない。
ぱっぱっぱっと幾つかの本を指差して、妻にこの店の「良さ」を伝える。
図書館司書である彼女も負けずに指を差し返す。
ぱっぱっぱっ。
うんうん。
ぱっぱっぱっ。
うんうん。
それから欲しい本の値段をチェックする。
安い。
喜びつつ、同時に心配になる。
大丈夫か?
本当にこれで。
この2割増しでいい。
いや、3割増しでもいい。
その代わり、絶対に店を潰さないと約束してくれ。

 

ぱっぱっぱっ。
うんうん。
ぱっぱっぱっ。
うんうん。

楽しそうでいいなあ。

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