牛乳を噛んで飲むだなんて

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最近の読書ペースはのんびりしていて、ちょっとずつ、それこそ1日1エッセイくらいのペースで読んでいた堀江敏幸の『バン・マリーへの手紙』(中公文庫)をようやく読み終えた。

エッセイ集『バン・マリーへの手紙』の最初に収録されているのは「牛乳は噛んで飲むものである」というエッセイだ。

堀江さんが幼稚園でお世話になった先生は、給食の牛乳について一家言を持っていたのだという。

牛乳はなまぬるい状態で、つまり、雌牛が仔牛に与えるくらいの温度で飲まなければ味がわかりませんよ、と最後にかならずそう言い添えるのだった。

牛乳は、噛んで飲むものよ。いったいどこで習ったのか、彼女は給食のたびにそう繰り返して、子どもたちがごくごく飲み干してしまわないよう監視し、唇のまわりの薄い産毛についた牛乳の膜を、それよりも白いハンカチでぽんぽんとはたいて吸い取り、しかるのちに笑みを浮かべて、ああ、やっぱり牛乳はこのくらいのほうがあまくておいしいわね、ユセンにしないと出てこない味なのよ、と言うのだった。

「ユセン」という言葉から、湯煎もしくは湯煎鍋のことをフランス語で「バン・マリー」という…となって、このエッセイ集のタイトルにつながっている。

私は子供の頃から牛乳が苦手で、給食に必ず出てくる牛乳には随分と苦労した。高校生になると給食がなくなり、ようやく牛乳から解放されたので、それ以降は牛乳をそのままで飲むことはなくなった。

だから、牛乳を噛んで飲むだなんて私にはとても無理だ。堀江さんの小説やエッセイはしっかりと噛んで味わっているけれど。

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買った本

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柴崎友香『春の庭』(文春文庫)、紅玉いづき『ガーデン・ロスト』(メディアワークス文庫)購入。

柴崎さんは好きな作家の一人で、新刊文庫が出たら必ずと言っていいほど買っている。帯にも書いてあるけど『春の庭』の文庫の解説は堀江敏幸さん。私にとっては何ともお得な組み合わせ。

『ガーデン・ロスト』は百合っぽいとか、そうじゃないとかで前から気になっていた。

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