堀江敏幸『郊外へ』エッセイのようでそうじゃない

車でちょっとの所に業務スーパーがあるから行ってみないかと夫が言うので一緒に行った。冷凍食品コーナーで私の好物トッポッキを見つけた。もちろん買った。パッケージ裏面に書いてある調理例の通りにキャベツと白ネギとひら天を入れてトッポッキ鍋にした。餅はツルツルでもっちりしていて、ソースが甘辛くて美味しい。油断していると後から辛さがくるのだけど、それがやみつきになる。また買おう。

 

堀江敏幸『郊外へ』(白水Uブックス)を読んだ。

私の本棚には五十音順ではなく、好きな作家順に文庫本が並んでいる。そうは言ってもベスト8か10くらいまでで後は適当だけど。今、一番最初(スライド式本棚の左奥)に並んでいるのは堀江敏幸の本。つまり一番好きな作家だと言っていいと思うのだけど、先日まではそこにデビュー作である『郊外へ』が並んでいなかった。白水Uブックスは新書サイズ。もしかしたら他の出版社とかで文庫化されるかもしれないと後回しにしていたのだけど、いい加減に諦めて買った。

新書サイズのコンサイス透明ブックカバーをつけて読んでいたのだけど、通りすがりにタイトルを見た夫が「その『郊外へ』っていう本はミステリー?」と聞いてきた。タイトルの上に小さく書いてる「エッセイの小径」は見えなかったらしい。途中まで読んでいた私は「エッセイだよ」と答えた。すると夫が「ふーん」と言って、その会話はそれで終わった。

しかし、最後の「Uブックス版あとがき」を読んで、『郊外へ』はエッセイではないと知った。背景などに多少の知見は込めてあるとしつつ「完全な虚構である」とあとがきにある。それぞれの物語に出てくる「私」が著者本人であるように感じられて、すっかりエッセイだと思っていた。堀江さんの作品にはエッセイなのか小説なのか、その境界が曖昧な作品が結構あるし、それが魅力のひとつだと私は思う。

 

よく晴れあがったある日の午後、私はウォーレンにならってヴァンセンヌ動物園に出かけた。象と河馬と熊とを表敬訪問したあと、キリンの柵の前にあるカフェテリアで休憩する。至近距離ですばらしいキリンの首筋を拝観しながら食事をし、ビールが飲める最高の場所だ。
「動物園を愛した男」堀江敏幸『郊外へ』(白水Uブックス)

 

堀江さんの静謐な文章を読んでいると、穏やかな気持ちになる。

 

だが本当のところ、小説の解釈など春先の天気とおなじくらいその時々の心境や経験の深度によってかわってしまうものなのだ。
「記憶の場所」堀江敏幸『郊外へ』(白水Uブックス)

 

読書をする、とりわけ再読、再々読をする度に私が感じていることで、頷きながら読んだ。

堀江さんの文章は時に難解に感じられて私には理解しきれていない部分もあるけれど、それでも定期的に読みたくなる。

買った本

今月の新刊文庫の中で一番楽しみにしていた江國香織『彼女たちの場合は』上・下(集英社文庫)がようやく届いた。

私は堀江敏幸も好きだし江國香織も好きだ。江國さんの作品との方が付き合いは長い。『物語のなかとそと』で江國さんが自身の小説『真昼なのに昏い部屋』のことを「ストーリーは古典的(ヒトヅマがヨロメク)ですし」と表現していた。

 

江國香織『物語のなかとそと』その文章に酔いしれる
江國香織『物語のなかとそと』を読んだ。江國さんのエッセイが文庫化されるのは久しぶりではないか。ちょっと調べてみたら、どうやら2013年8月に文庫化された『やわらかなレタス』以来のようだ。

 

「ヒトヅマがヨロメク」のがメインのストーリーは残念ながらあまり私の好みではない。その点『彼女たちの場合は』は14歳と17歳の少女(二人は従姉妹)のアメリカを舞台にしたロードノベルということだし、文庫化が待ち遠しかった。

上巻を読み始めたところで早くも江國ワールドにどっぷりハマっている。

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