井伏鱒二『風貌・姿勢』堀辰雄、小林秀雄、永井龍男、太宰治…

Kindle Oasisを買って変わったのは、前よりもさらにお風呂で本を読むようになったこと。以前も文庫本をお風呂に持ち込んで読んではいたけれど、やはり湿気が気になった。Kindle Oasisには防水機能があるし、ページめくりボタンのおかげで片手でページをめくることが出来るのがとても便利。購入当初は紙の本派の私が本当にKindleを使うかどうか半信半疑だったけれど、買ってよかった。

 

Kindle Oasis遂に購入!果たして紙の本から電子書籍へ移行できるのか!?
Kindle Oasis 第10世代(2019)のレビューです。Amazonタイムセールで購入しました。本体、液晶画面、使い方、アクセサリーなどについて説明しています。

 

井伏鱒二『風貌・姿勢』(講談社文芸文庫)Kindle版を読んだ。

電子書籍の良い点はセールがあるところ。講談社文芸文庫は、サイズは文庫本でも価格は単行本並みもしくはそれ以上だったりするので、私にとっては気軽に手が出せない代物。『風貌・姿勢』Kindle版はセール中にたまたま見つけて面白そうだと思って買った。ちなみにセールで330円だった。

井伏鱒二『太宰治』(中公文庫)を読んで、井伏鱒二の文章の親しみやすさ、面白みを知った。それまでは難しい文章を書くのだろうと勝手に思っていたので意外だった。

 

井伏鱒二『太宰治』井伏から見た太宰
井伏鱒二の『太宰治』を読んだ。「太宰治から『会ってくれなければ自殺する』という手紙を受けとってから、師として友として、親しくつきあってきた井伏鱒二。」という内容紹介に興味を持ったのだ。

 

それで、今度も井伏鱒二が他の作家・文士について書いたものを読みたいと思って『風貌・姿勢』を選んだ。

『風貌・姿勢』はお風呂で少しずつ読んだ。堀辰雄、小林秀雄、永井龍男、三好達治、太宰治など井伏と交流があった人物だけでなく、夏目漱石、森鴎外(の作品)についても書いていて、ひとつの随筆が短めなので区切りよく読め、私のお風呂読書に最適だった。

「中村正常」という随筆に中村正常と永井龍男が泊まっている旅館を井伏が訪ねた時のエピソードがあるのだが、それが何とも微笑ましい。中村と永井が旅館の可憐な給仕の女中に対して甚だ遠慮深い様子(永井は一週間も滞在しているのに女中と口をきいたことさえない)を見た井伏は彼等を元気づけようとある遊戯を考えつく。

 

———永井龍男が旅館の女中をなぐる真似をすると、私が永井の腕をつかんで、えいとばかりに彼を投げとばす。永井はわざと見事に投げられる。そこで私は女中の傍に行って、
「オトリさん(女中の名)悪漢はこの通り投げつけましたから、安心なさい。」
と告げる。
そのことをくり返すという遊戯なのである。中村正常はこの遊戯を見物していたが、彼は漸く活気づいて来て、
「僕にも投げさしてくれないか。」
と頼んだ。そこで私と永井とは中村に投げられてやった。中村がこのときくらい元気で且つ得意顔であったことは、まだ一度も見ない。
「中村正常」(井伏鱒二『風貌・姿勢』)

 

中村正常は「僕は体が弱い。なが生きできないんだ。」と言い、手紙に遺言みたいなことが書いてあると井伏が書いている。井伏が考えついた遊びは中村(と永井)を元気づけるのに成功したようだ。『風貌・姿勢』の中で私の一番のお気に入りエピソードだ。

 

ライブラリだと『風貌・姿勢』の表紙が表示されるのにKindle版は紙の本と同じ表紙ではなく、アルファベットのKとDの間にKODANSHAとあるシンプルなものになっている。表紙のデザインも含めての本だと思うので、出来ることなら表示するようにしてもらいたい。そういえば同じ講談社文芸文庫の庄野潤三『自分の羽根』や講談社の藤野可織『ピエタとトランジ<完全版>』のKindle版もそうだった。

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