伊坂幸太郎“殺し屋シリーズ”第3弾『AX』を読んで泣く

今月発売の新刊文庫で楽しみにしていた伊坂幸太郎の『AX』(角川文庫)を読んだ。

『AX』は『グラスホッパー』、『マリアビートル』に続く(?)“殺し屋シリーズ”の第3弾になる。続くと書いたけれど、同じ登場人物がちらっと登場したりはするがストーリーが続いているわけではないので『AX』から読み始めたとしても問題なく楽しめる。

主人公は「兜」と名乗る殺し屋兼文房具メーカーの営業マン。兜には妻と高校生の息子がいるが、家族は兜の裏稼業のことは知らない。裏の業界では一目置かれる存在の兜だが、そんな彼が最も恐れるのは妻。妻の言動には常に細心の注意を払い、機嫌を損ねないように行動するよう努める。そんな父の恐妻家ぶりを半ば呆れ半ば憐れむ息子の克己。

 

兜と克己の会話の中に気になっている作家の名前が出てきた。

「あ、これ、おまえが前にオススメしてくれたのを読んでいるんだが」兜は持っていた文庫本を少し上げた。
「何だっけ」
「古山高麗雄」
「ああ、勧めたっけ?テスト問題に出ていたやつだよ」

 

古山高麗雄のことは、前に読んだ荻原魚雷さんの本で初めて知ったと思っていたけれど、実は『競馬読本』(山口瞳選)でその作品を読んでいたと後でわかった。『私の競馬道』と『競馬場の春』はいつか読んでみたいと思っている。

 

話を戻そう。家族の存在が兜に殺し屋の引退を決意させるのだが、兜に依頼を仲介している医師はそれを許そうとはしない。自分が足を洗うことで家族に危険が及ぶのを恐れる兜は依頼をずるずると引き受け続ける。

これまでの“殺し屋シリーズ”も暗さや怖さの中に伊坂さんらしいユーモアが散りばめられていて重苦しいだけの小説にはなっていなかったけれど、『AX』は恐妻家という兜のキャラクターもあって一層ユーモラスな雰囲気が漂っている。標的を前にしても緊張することのない兜が妻からの着信やメールに恐れおののき冷や汗すら流す姿にはクスッと笑ってしまう。

そんな雰囲気だったからこそ、「AX」、「BEE」、「Crayon」、「EXIT」ときて最後の「FINE」が私にとってはまさかの展開で嘘でしょと驚いた。泣いた。ここまできたらハッピーエンドがよかったのに。でも、ハッピーエンドではなかったけれど、ハッピーなエンドだった。これのどこが「FINE」なのかと思ったけれど、なるほど、このラストなら「FINE」だ。

やはり伊坂さんの小説は面白い。“殺し屋シリーズ”が続いたらいいな。

買った本

伊坂幸太郎『AX』(角川文庫)、穂村弘『絶叫委員会』(ちくま文庫)購入。

ほむほむのエッセイが止まらない!エッセイしか読んでいなくて何やら申し訳ない気持ちになるけど。

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