伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』またしてもビートルズ

まだ6月なのに、と思いながらエアコンをつける。雨が降ったりやんだりの天気が続いている。今日は雨が降りそうだから買い物に行くのはやめて、夕食は家にあるもので作ろう、そうしようと誰に言い訳するわけでもなく思う。肉は冷凍保存しているのがあるからいいけれど、問題は野菜だ。冷蔵庫の野菜室を見ると、トマトとネギ(白ネギ、小ネギ)、えのきがあった。さて、どうしよう。

 

伊坂幸太郎さんの誕生日である5月25日に「#伊坂幸太郎さんmybest5」というハッシュタグを見かけたので、やってみた。

 

 

私が選んだのは、『フィッシュストーリー』、『砂漠』、『ゴールデンスランバー』、『チルドレン』、『マリアビートル』の5作品。どちらかというと初期の作品になるんじゃないかと思う。

 

久しぶりに読みたくなったので、伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』(新潮文庫)を読んだ。

主人公の青柳雅春は、元宅配便ドライバー。かつて配達先で泥棒に襲われていたアイドルを助けた青柳は、二枚目という外見もあって世間から注目を集めた。その青柳が、再び世間の注目を集めたのは、首相暗殺の犯人としてだった。青柳は身に覚えのない事件の犯人として警察に追われる。しかし、ただの冤罪ではない。外堀を埋めるかのように青柳が犯人であると思わせる映像や証言が次々と出てくるのだ。

文庫でおよそ680ページという長編小説。久しぶりに読んだのだけど、内容をほとんど忘れてしまっているといういつもの場合と違って、大体の内容は覚えていた。好きな作品だから何度か読んでいるし、映画も観ているからかもしれない。それでも、初めて読んだかのように面白かった。もう、あれもこれも伏線回収されまくりで、ものすごく面白かった。

私が伊坂幸太郎の作品の中で、特に初期の作品が好きな理由のひとつは、軽妙さ。『モダンタイムス』や『夜の国のクーパー』などには、それを感じられなくて困った。単に私の好みに合わなかったというだけだけど、それまで私にとって伊坂作品はどれを読んでも面白かったから、残念に思った。とはいえマイベスト5にも挙げた『マリアビートル』もそうだけど、『モダンタイムス』以降の作品にも好きなものはたくさんある。

 

「びっくりするくらい空が青いと、この地続きのどこかで、戦争が起きてるとか、人が死んでるとか、いじめられてる人がいるとか、そういうことが信じられないですね」

 

びっくりするくらい青い空、そういえば梅雨空のせいで最近見ていない。見たいな。

 

人間の最大の武器は、笑えることではないか? そう言いたかった。どんなに困難で、悲惨な状況でも、もし万が一、笑うことができれば、おそらくは笑うことなどできないのだろうが、笑えれば何かが充電できる。それも真実だ。

 

何度か泣きながら読んだ。読み終えると、人間って怖い、でも、人間っていいなってなった。これは、そういう小説だと思う。

ところで、この小説を読んでいる時、とある登場人物の声が、映画でその役を演じた濱田岳さんの声で脳内再生された。映画を観る前に読んだ時はもちろん違ったけれど、映画を観た後では、もう濱田岳さん以外ありえない、それくらいハマり役だと私は思う。

またしてもビートルズ

仲間がいなくなり、たった一人で必死にメドレーを作るポール・マッカートニーの寂しさが、自分の背中に被さってくるようだった。「ゴールデン・スランバー」、と迫力のある声が謳い上げる。長く、胃に響く、声だ。

 

これも伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』からの引用。

『ゴールデンスランバー』というタイトルは、ビートルズの「Golden Slumbers」という曲から付けられたもの。ちょっと前に、これも久しぶりに読み返した金城一紀『レヴォリューション No.3』もビートルズの「Revolution」という曲に関係していた。ただそれだけだけど、またしてもビートルズ、となんとなく思った。

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