伊坂幸太郎『マリアビートル』ブラッド・ピット主演で映画化!ブラピが演じるのは?

朝起きた瞬間から夜寝るまで(たぶん寝ている間も)とにかく暑い。スーパーのアイスコーナーでパルムではなく、練乳かき氷いちご味に手が伸びる。暑い時はチョコアイスよりも氷アイスだ。

 

伊坂幸太郎『マリアビートル』(角川文庫)を久しぶりに読んだ。

『ゴールデンスランバー』を久々に読んだら、伊坂熱が再燃したので、私の伊坂幸太郎作品マイベスト5から他の作品も読みたくなった。それで、ブラッド・ピット主演で映画化される『マリアビートル』を読むことにした。監督はデヴィッド・リーチ、映画のタイトルは『ブレット・トレイン』。『マリアビートル』英語版タイトルが『Bullet Train』なのだ。その『Bullet Train』は、ダガー賞にノミネートされていたのだけど、残念ながら受賞とはならなかった。

デヴィッド・リーチ監督の作品は『アトミック・ブロンド』と『Mr.ノーバディ』を観たが、どちらも私好みで面白かったので『ブレット・トレイン』にも期待している。

 

『ゴールデンスランバー』よりおよそ100ページは少ないといっても『マリアビートル』も文庫で570ページ超となかなかの長編。好きな作品ではあるけれど、いざ読み返すとなると、それなりの時間と気合が必要になる。しかし、読み始めてしまえば、あとは伊坂ワールドに引きこまれて、夢中になってページをめくるだけ。

『マリアビートル』は、「殺し屋シリーズ」の第2弾。第1弾が『グラスホッパー』、第3弾が『AX』で、私はどれも好きだけど、一番好きなのは『マリアビートル』。殺し屋シリーズは刊行順に読まなくても楽しめる。ただ、多少前作とリンクしているので、細部まで楽しみたい場合はやはり第1弾から読むのがいいかもしれない。

 

『マリアビートル』の舞台は、東京から盛岡に向かう東北新幹線「はやて」の車内。メインとなる登場人物は5人。「木村」は元殺し屋の警備員で、小学生の息子の復讐のため男子中学生「王子」を狙いはやてに乗り込んだのだが、王子から返り討ちにあう。「蜜柑」と「檸檬」は二人組の殺し屋で、業界で恐れられている人物からの依頼で、その人物の息子とトランクを盛岡まで無事に送り届けるため、はやてに乗っている。「七尾」もやはり殺し屋で、依頼を受け、はやての車内にあるトランクを奪って上野駅で降りるはずだった。メインは、彼ら5人なのだが、そこにさらに別の殺し屋たちも絡んできて、新幹線の車内で殺し合いが繰り広げられる、というのがざっくりとしたあらすじ。

新幹線という逃げ場のない動く密室(途中で停車はするけど)で腕利きの殺し屋たちが戦いを繰り広げる。そのアクションシーンの描写はもちろん、心理合戦も丁寧に描かれていて見事。『マリアビートル』は、ハリウッドで映画化(しかもブラピ主演)も納得の超エンタメ小説だ。

何度読んでもゾッとするのは、殺し屋たちではなく中学生の「王子」だ。人を肉体的、精神的に痛めつけ、悶え苦しむ姿に愉悦を覚える。七尾も蜜柑も檸檬も殺し屋で、木村も元殺し屋なのだから、善人ではないし正義のヒーローでもない。それでも、彼ら殺し屋が可愛らしく思えるほどおぞましいのが王子なのだ。

 

伊坂作品には作中に小説や本のタイトルが出てきたり、それらからの引用があったりする。それも私が伊坂作品を読む楽しみになっている。

読書好きの蜜柑が檸檬に言う。

 

「何でもいいけどな、たとえば、『灯台へ』を読んでみろ」
「何が分かるんだ」
「自分という存在が、いかに、小さい存在か、たくさんの自我の中の一つに過ぎないかを実感できる。渺茫と広がる時間の海の中の、その波に飲まれる、ちっぽけな存在だと分かる。感動するぞ。『われらは滅びゆく、おのおの一人にて』だ」
「何だよそれは」
「あの小説の中で、登場人物の一人が呟くんだ。いいか、人はみんな滅ぶ。一人きりで、だ」

 

『灯台へ』は、ヴァージニア・ウルフの小説。『マリアビートル』を読む度に『灯台へ』や三島由紀夫の『午後の曳航』を読んでみたいと思うのだけど、未だに読んでいない。

伊坂さんの小説を読む時は、どんな些細なことも全てが伏線なのではと思ってしまう。この『灯台へ』からの台詞の引用だって、漫然と引用しているのではない。

 

ところで、ブラピは映画で一体誰の役を演じるのだろうか。年齢的には木村が近いと思うけど、それはないか。いや、でも見方によっては『マリアビートル』の主役は木村といってもいいはず。

 

ブラピが演じるのは、七尾だった。役名は、レディバグ。レディバグは、てんとう虫。七尾は業界で「てんとう虫」と呼ばれているのだ。

しかし、七尾はまだ若く現役の殺し屋のはずだが、ブラピ演じるレディバグは、久しぶりに任務に復帰する殺し屋という設定のようだ。また、王子は、プリンス(プリンセスではなく)という女子学生になっている。予告を観る限り、原作の再現度は50%というところだろうか。でも、デヴィッド・リーチ監督得意のド派手なアクションが楽しめそうだ。

ちなみに原作で七尾に指示を出す真莉亜は、サンドラ・ブロックが演じる。役名はそのままマリア。

 

伊坂幸太郎が描く悪のどす黒さは半端ない。しかし、『マリアビートル』もそうだが、ほとんどの伊坂作品は、いわゆるイヤミスにはなっていない。読後に嫌な気持ちになるどころか胸がスッとする。それは伏線と同じように、あちらこちらに笑いや優しさ、救いが散りばめられているからではないかと私は思う。

 

ヴァージニア・ウルフの『灯台へ』いつか読んでみたい。いつか。

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