今日から7月。2022年下半期に突入した。過ぎてみればあっという間で、何もしないうちに半年経ってしまったような気がして意味もなく焦る。でも、何事もなく半年を過ごせたと思えば、それはそれで幸せなのかもしれない。私の今日の幸せは、セブンイレブンの贅沢シューアイスが美味しかったこと。
山崎努『柔らかな犀の角』(文春文庫)を読んだ。俳優・山崎努さんが週刊文春に7年にわたって連載していた「私の読書日記」をまとめたもの。
私は、この本の存在をWEB本の雑誌の「作家の読書道」で知った。作家の大前粟生さんが紹介していた。購入する前に『柔らかな犀の角』をツイッターで検索してみたら、なぜか山下智久さんのファンの方のツイートがたくさん出てきた。どうやら『柔らかな犀の角』は、山Pの愛読書らしい。
確かに山下さんが、『ダ・ヴィンチ』2018年8月号の表紙で『柔らかな犀の角』の文庫を手に持っている。
山下さんが「人生のバイブル」として紹介しているらしい。ちなみに『柔らかな犀の角』に「山下智久」という名前がちらっと出てくる。
私は『柔らかな犀の角』Kindle版を購入したので、お風呂にKindleを持ち込んで、毎晩少しずつ読んだ。日記やエッセイは、一区切りが短いので、そこまで長風呂ではない私のお風呂本に最適なのだ。
山崎さんは、小説、エッセイ、ノンフィクション、詩、写真集と幅広いジャンルの本を読んでいる。
私の好きな武田百合子の『富士日記』も読んでいる。
×月×日
武田百合子の『富士日記』(中公文庫 上中下巻)に、夏になるときまって「『黒い雨』を読む」という一行が出てきて、それが何日が続く。『黒い雨』はもちろん井伏鱒二の原爆被災者を題材にした小説。こんなふうにあの戦争に拘わる人もいるのだと刺戟を受ける。
別の日の日記には、武田泰淳と花さんの名前も出てくる。
『タデ食う虫と作家の眼』(清流出版)は武田泰淳の映画に関する評論を収めた本だが、その「あとがき」で、娘さんの写真家武田花が、両親と通った映画館での思い出を語っている。アイスクリーム、サンドイッチ、途中で買って持ちこんだ中華まんじゅう、なかでも甘いべとべとしたノシイカをくちゃくちゃ食べるのが好きだったという。画面と間食を同時に貪っている親子の情景が目に浮かび、ほほえましい。映画には親しい人と揃って見る楽しさがあるのだ。
また、こんな本好きあるあるも書いてあって、頷きながら読んだ。
×月×日
読み終えて、すぐアタマに戻りたくなる本にときどき出会う。
文句なしに愉しい時間だけれど、残念ながら浮き世には他にもやることがあって、いつまでもその本の世界に留まっているわけにもいかない。またあとで、と本棚の特別なコーナーに収める。
そのコーナーが少しずつ拡大した。実のところ、もうそこにあるストックだけで余生は充分賄えるのではないかと思うのだが。
最近、好きな本を読みかえすことが増えた。未読の本を読むわくわくもあれば、既読本を読みかえす楽しさもある。あんなに好きだったのに、久しぶりに読んだらそうでもなかった、なんてこともたまにあるし、その逆もあったりして面白い。
他に私がつい最近読んだ荒川洋治の『忘れられる過去』のことも書いてあって、おおっと思った。
『柔らかな犀の角』は文庫本だと406ページあるようだ。お風呂でちょっとずつ読んだのだけど、随分と長く楽しめた。
武田泰淳の『タデ食う虫と作家の眼』が、花さんのあとがきも含めて気になった。