柴崎友香『フルタイムライフ』本棚に黄色い背表紙の河出文庫を並べて

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窓からレースのカーテンを揺らしながら入ってくる風が心地よくて、お昼にトムヤムクンラーメンを食べた後ついうとうととして気付いたらもう夕方だった。そんな日曜日。

 

柴崎友香の『フルタイムライフ』(河出文庫)を読んだ。

河出文庫の柴崎作品は『フルタイムライフ』以外は全て読んでいて、そのうち読もうと思いながらそのままになっていたのをようやく買って読んだ。本棚に黄色い背表紙の河出文庫を並べてこれでコンプリートした(と言っても7冊だけど)と一人で満足した。

美大を卒業して滑り込みで入社した会社で働く春子の10ヶ月を描いている。4月から3月までの1年間じゃなくて5月から2月までの10ヶ月というなんだかちょっとスッキリしないところが柴崎さんっぽい気がした。「え、2月で終わるの?」みたいな。

春子の仕事は会社の事務で、最初はコピーやシュレッダーをしたり、案内状を封筒に入れたり簡単な仕事を任されるのだけど、その様子がかなり細かく描かれている。これも柴崎さんらしい。ほとんどが会社の中の出来事で特に大きな事件が起きるわけではない。一番ひやっとしたのは春子が会社のパソコンをこっそり私用で使ってフリーズさせてしまった事ぐらいだろうか。本物の日常小説だ。それでも読ませるのが柴崎さん。静かな作品なのに人や物、風景などの描写が繊細でイメージがぶわっと浮かぶのだ。

それに視覚的な表現だけじゃなく心理的な表現もピッタリくる。

 

四時過ぎなのにもう外は暗くなりかかっていて、日が暮れたからってできなくなることも特に思いつかないのになんでこんなに気分が違うんやろ

 

自分では上手く言い表せない気持ちが柴崎さんの手にかかるとすとんと落ち着く言葉で表現されていて思わずハッとする。

あとは柔らかい関西弁が心地いい。キツいのじゃなくて柔らかいのがポイント。

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買った本

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畑野智美『海の見える街』(講談社文庫)と高山なおみ『帰ってから、お腹がすいてもいいようにと思ったのだ。』(文春文庫)を買った。

リアル書店で買ったのだけど、『海の見える街』は表紙のイラストに惹かれて手に取ってあらすじを見ると「市立図書館で司書として働く」とあったので購入を決めた。登場人物に書店や図書館で働く人が出てくるとそれだけで読みたくなるのだ。

高山なおみさんの本を買うのは初めて。これも文庫の棚をうろうろして購入を決めた。

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