『松江日乗 古本屋差し入れ日記』松江にある古本屋店主の日記

年末年始は本を読んだ。映画を観た。あとは食べて、寝て、それで終わった。

年末年始に読んだのは、吉田篤弘『台所のラジオ』、イノハラカズエ『松江日乗 古本屋差し入れ日記』、堀江敏幸『雪沼とその周辺』、長嶋有『夕子ちゃんの近道』。『雪沼とその周辺』と『夕子ちゃんの近道』を読むのは何度目か。どちらも読み返す度にいいなあと思う。

映画はNetflixで『7人の女たち』、『ナイブズ・アウト グラス・オニオン』、『エクストリーム・ジョブ』、アマプラで『ロング・トレイル!』。

いい休みだった。来週から仕事だ。

 

年末年始にゆっくりと読もうと思って買ったイノハラカズエ『松江日乗 古本屋差し入れ日記』(ハーベスト出版)だったけど、ちょっとだけのつもりで読み始めたら止まらず、年が明ける前に読み終えてしまった。

『松江日乗 古本屋差し入れ日記』は、島根県松江市にある冬營舎という古本屋の店主イノハラカズエさんの日記。帯に「本はさっぱり売れないけれど、お客さんが毎日のように差し入れを持ってやってくる。」とある。さすがにちょっと大げさに書いているんだろうと思っていたけど、読んだらこれが本当で、店は大丈夫なのかと心配になった。

『松江日乗』の存在を知ったのはツイッター。私はもともと日記を読むのが好きなのだけど、この本に惹かれた理由はそれだけじゃない。松江が知らない土地ではないから。購入前にAmazonで試し読みのページを読んだのだけど、知っている店の名前がいくつかあり、それだけで嬉しくなった。

古本屋の店主の日記なのだけど、「古本屋差し入れ日記」というサブタイトル通り本のことよりもお客さんからの差し入れについての記述が多い。たまに知っている本のタイトルなんかが出てくると、「おっ」と思う。

 

夜になってBOOK在月実行委員のアサギさんから「今から天ぷら屋に来ない?」と誘惑のメールが。こんな時にかぎってお客さんが途切れず結局行けなかったのだが、閉店後にアサギさんが、その神いしの天丼をとどけてくださる。
「(吉本ばななの)『キッチン』のカツ丼みたいに持ってきたよ、早くお食べ」と言って。

 

時間ができたときのためにいまから本をためておくの、と女性ふたり組。わたしもためている。『井伏鱒二自選全集』とか『寺田寅彦全集』とか、『断腸亭日乗』とか。はやく引退して日々本とたわむれたい。

 

イマジンコーヒーのスタッフのサッちゃんが、荒川洋治の詩集『水駅』を探しているというので、こちらで安いのを探してみることにする。ちょうどいま『忘れられる過去』を読んでいると言うと、わたしも、とサッちゃんのかばんからその『忘れられる過去』が出てきた。

 

私も誰かから「『キッチン』のカツ丼みたいに持ってきたよ、早くお食べ」って言われてみたい。あと、私は積読はあっても本をためてはいないのだけど、今はまだ読まないようにしている作家がいる。それは、藤沢周平。時代小説にハマった時期があって、すでに何作か読んでしまっているけれど、川上弘美のエッセイ集『あるようなないような』の「ごうつくばあさま」というエッセイにおいしいものは後まわし方式で藤沢周平の著作を読まずに我慢して残しているとあるのを読んで以来それを真似している。だけど、私も随分歳を重ねたし、今は読める時に読んだ方がいいかもと思い始めている。

それから、荒川洋治の『忘れられる過去』は私も昨年読んだのだけど、『忘れられる過去』を読んでいると言ったら、「わたしも」と言ってかばんからその本が出てくるなんて、なんだかいいなと羨ましくなった。

荒川洋治『忘れられる過去』読書は本を読む前からはじまる
荒川洋治『忘れられる過去』(朝日文庫)を読んだ。読書にまつわるエッセイが多く収録されているということで以前から気になっていたのだけれど、ちょうど読んでいた長嶋有『本当のことしかいってない』に2003年に出会ったすぐれたエッセイ三冊のうちの一冊として挙げてあった。

 

他には毎日のように差し入れをしてくれていた常連客のおひとりが日記後半からパタっと登場しなくなって、大丈夫だろうかとちょっとハラハラしたり。とにかく面白く読んだ。やっぱり日記って面白い。ただ、店主がためていると書いていた永井荷風の『断腸亭日乗』だけど、私は『摘録 断腸亭日乗』(岩波文庫)の上巻をちょっとだけ読んだあと積んだままになっている。そのうち読みたい。

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