死神の浮力

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最近どこからともなくむくむくと読書欲が湧いてくる。やはり読書の秋だからなのだろうか。それにしてはここ数日の雨のせいで蒸し暑い日が続いていて、とても秋だとは思えないのだけど。

伊坂幸太郎の『死神の浮力』(文春文庫)を読んだ。

文庫が発売されてすぐに買ったのにしばらく積んだままにしていたのは、娘を殺された夫婦が犯人への復讐を計画するというあらすじのせいかもしれない。いざ読んでみると、プロローグは予想通りの重苦しい雰囲気で、この先どうやって前作のように時折クスッと笑えるユーモアを挟むというのだろうかと不安になった。しかし、それも死神の千葉が登場するまでの話だった。人間の世界に通じているようで通じていない千葉の言動に娘を亡くしてから笑うことのなかった山野辺夫妻が、それが苦笑であれ、失笑であれ、笑うようになると、それまでの張り詰めた雰囲気が変わってシリアスな中にユーモアを感じられるようになった。これこそまさに私の好きな伊坂作品だ。

「ああ、それだ。俺ではなく、浮力が働いただけだ。働き者だな」

例えば千葉のこんな言葉に山野辺の心がふわっと軽くなり、私の心も軽くなる。犯人がどうしようもない悪人なだけに死神だから当然とはいえ何事にも動じず飄々としている千葉の存在に救われた。

それにしても今回も伏線の張り方が絶妙だった。あそこで話していた人物がここで登場するとは…と思わずニヤリとせずにはいられなかった。私が望んでいた結末にはならなかったけれど読後感は悪くないというか、清々しい。『死神の精度』を読み返したくなった。

『ジャイロスコープ』を読んだ時はパウエル元国務長官の本が読みたくなったけど、今回はパスカルの『パンセ』が気になって思わず検索してしまった。

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