大岡昇平の『成城だより』が面白かったので2巻と3巻も買う

そういえば今夜は飲み会だったなどと夫から急に言われた時は「前もって言ってよね」と一応不満げに言うのだけれど、心の中では夕食を作らなくてもいいんだと小躍りしている。まあ、自分の分は作るのだけど、思いきり手抜きできるのが嬉しい。そんなわけで今夜は小さなフライパンで作った肉豆腐をそのままテーブルの上の鍋敷きにどんと置いて食べた。卵は火を止める少し前にフライパンに投入しておいたので、使った食器はごはん茶碗と箸とコップだけ。どうせなら後片付けも楽をしたい。

 

大岡昇平の『成城だより』(中公文庫)を読んだ。全3巻の第1巻。

『成城だより』を読もうと思った理由は前に「『富士日記を読む』を読む」に書いたが、『富士日記を読む』で岡崎京子さんがこんな風に書いているのを読んだから。

 

私はハマると同じ傾向のものを、どんどん読んでしまうところがあって、大岡昇平さんの『成城だより』も読んでみました。『成城だより』は作家の日記ですから、日常だけではなくて、何ごとかへの考察とか、作品をまとめるための雑記みたいなものも書かれていて、百合子さんの日記みたいにはのんびりしていない。でも、同じ日付の同じ事柄が微妙に違っていたりして、おかしいですよ。

 

「作家の日記ですから、日常だけではなくて、何ごとかへの考察とか、作品をまとめるための雑記みたいなものも書かれていて、百合子さんの日記みたいにはのんびりしていない」と岡崎さんが書いている通りであったけれど、私が想像していたよりもユーモラスで面白い日記だった。

そして期待していた通り日記には武田百合子さんの名前がしばしば出てきた。

 

1980(昭和55)年六月十六日の日記より。

武田百合子さんのマンション、近所なれば、帰りに埴谷と寄る。正面に武田泰淳の仏壇作りあり。百合子さん、最近、車を運転してると、隣の空席に泰淳いるような気がし、いないのに気がつくと涙が出て来て、泣きながら運転す、との泣かし随筆をものせることにつきからかう。
百合子さんはすでに週末は富士北麓の山小屋に行きあり。こっちは隣組だが、老衰して梅雨が明けないと行けず。しかしこんどはこっちが「日記」を書いてるから「富士日記」の仇取ってやるぞ、といえば、あぶないから近寄らない、という。武田山荘の上り下りきつく、去年は降りて行かれなかったが、今年は降り切って覗き見してやるぞとおどす。

 

同年八月十六日の日記より。

帰途、武田邸に寄る。花ちゃんのお婿さん、稲生君、赤屋根のさびおとしあり。あと塗り直すという。男手あるのでたすかると百合子さんいう(泰淳は全然「男手」ではなかった。筆者も同じ)。庭先に椅子を出し、紅茶ミルク濃い目一杯半、カステラ厚目一切れ。武田と同じ階下の和室を仕事部屋にしている。但しさすがに女なれば万年床なし、きれいに掃除しあり。コクヨ二百字詰原稿用紙百帖以上残りあり。当分困らないそうだ。

 

さらに同年十月十三日の日記より。

武田百合子さんも来ている。八月の「日記」にて武田山荘訪問の条に、「紅茶ミルク濃い目一杯半、カステラ厚目一切れ」で『富士日記』の仇取った、と威張る。男でも出された食物の詳細報告の能力ありという。

 

「男でも出された食物の詳細報告の能力あり」と威張ってみせるところが何だか子供っぽくて面白い。文庫のカバー写真からはちょっとイメージ出来ない。

 

本や映画の感想なども書かれているのだけど、意外だったのは『じゃりン子チエ』まで読んでいたこと。

 

1980(昭和55)年八月八日の日記より。

『じゃりン子チエ』三、四まで読む。去る五月、井上ひさし氏が「朝日」の文芸時評で、叙事詩とほめ上げてよりの問題作。「バラエティ」九月号「朝日ジャーナル」八月八日号が、作者のはるき悦巳氏にインタヴュして、「子供から四十歳の大人まで面白い」とあっては、物好き老人は読まずにはいられない。幼稚園児の孫、半分ぐらいしかわからず、何度もくり返し読むので持って来てあるのなり。老人にも、キン玉を抜かれて、近所の土佐犬にやられたアントニオが、威厳を持ったまま剥製にされた図柄面白けれど、孫も猫のけんかが一番わかるらしく、そこを話してくれる(小鉄、アントニオ・Jrがひいきなり)。「あかん」とか「やったるど」など大阪弁使う。マンガの影響力怖るべし。親がほしがるままに買って与えるので、蔵書百冊を越え、マンションの子供たち、「あそこ行くと歯医者ぐらい、マンガあるよ」といって読みに来る由。

 

『成城だより』に『じゃりン子チエ』の話題が出るとは思わなかった。私の父は『じゃりン子チエ』のアニメが好きで、私が子供の頃、レンタルビデオ屋でよく『じゃりン子チエ』のビデオを借りて来たので一緒に観た。それが面白かったという思い出があったので、大人になってから『じゃりン子チエ』のマンガを文庫本で何巻までだったか揃えたのだけど、今は手元にないのが残念だ。

 

買った本

とりあえず1巻だけ買って読んだ『成城だより』が面白かったので、2巻と3巻をまとめて買った。全3巻なのでこれで揃った。

それにしても最近中公文庫ばかり買っているような気がする。

 

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