津村記久子『サキの忘れ物』読書って本当にいいもんですね

今日から9月。朝は、ほんの少しだけ涼しくなったような気がする。それにしても8月は猛暑続きでつらかった。秋よ早く来い。

ここ最近は読書熱が下がり気味で、時間があるとアマプラやネトフリで映画を観ることが多かった。そんなこんなで久しぶりの更新。前回が4月だから、およそ5か月ぶり。その間に読んだのは、村上春樹『一人称単数』(文春文庫)、早見和真『ザ・ロイヤルファミリー』(新潮文庫)、沢木耕太郎『作家との遭遇』(新潮文庫)、武田百合子『絵葉書のように』(中公文庫)。『作家との遭遇』を読んで、読み返したくなった向田邦子『父の詫び状』(文春文庫)など。あとは荒川洋治『文庫の読書』(中公文庫)をちびちびと読んでいる。

どれも面白かったけれど、特に『ザ・ロイヤルファミリー』は競馬好きな私にうってつけで長編小説なのだけどあっという間に読み終えてしまった。

 

8月の新刊文庫でとても楽しみにしていた津村記久子『サキの忘れ物』(新潮文庫)を読み始めたら、まず最初の表題作がとにかく私好みで「いやあ!読書って本当にいいもんですね」と言いたくなるくらいよかった。

その表題作「サキの忘れ物」の主人公・千春は、高校をやめて病院に併設の喫茶店でバイトをしている。いつも読書をしている常連の女性客が店に忘れていった文庫本を千春はこっそり持ち帰る。千春は読書好きなのかというと、そうではなく、むしろ「これまでの人生で、最後まで読めた本は一冊もない」というくらいで、持ち帰った文庫本も読むのを諦めて翌日には店の忘れ物の棚に戻すのだった。忘れ物の文庫本は、サキの短篇集。

千春は、読めなかったサキの本がどうしても気になり、バイト帰りに書店で買う。

 

いつもより遅くて長い帰り道を歩きながら、千春は、これがおもしろくてもつまらなくてもかまわない、とずっと思っていた。それ以上に、おもしろいかつまらないかをなんとか自分でわかるようになりたいと思った。それで自分が、何にもおもしろいと思えなくて高校をやめたことの埋め合わせが少しでもできるなんてむしのいいことは望んでいなかったけれども、とにかく、この軽い小さい本のことだけでも、自分でわかるようになりたいと思った。

 

サキの短篇集との出合いが千春のこの先の人生を決めるひとつのきっかけになるのだけど、その展開がいい。やっぱり津村さんの小説はいいなあとしみじみ思った。

『サキの忘れ物』には表題作を含め全9篇が収録されている。私が選ぶベスト1は「サキの忘れ物」、ベスト2「隣のビル」、ベスト3「河川敷のガゼル」。

それから収録作「真夜中をさまようゲームブック」は、タイトル通りゲームブック形式の小説。私が子供の頃にゲームブックが流行って、ドキドキしながら読んだのを懐かしく思い出した。選択を間違えると戻って別の選択をするというズルをして何とか結末に辿り着くことが出来た。

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買った本

購入本紹介。まずは荒川洋治『文庫の読書』(中公文庫)。本当にちびちび読んでいて、3分の2まで読んだところ。読書エッセイで一作品につき大体2〜4ページくらいなのでちびちび読むのにいい感じ。仕事の休憩時間に読んでいる。

 

そして、津村記久子『サキの忘れ物』(新潮文庫)。『サキの忘れ物』を読んだら読書熱が上がって、積読本があるのに新しい本が欲しくなったので、気になっていた島田潤一郎『あしたから出版社』(ちくま文庫)を買った。

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