津村記久子『ディス・イズ・ザ・デイ』サッカー好きでもそうでなくても

サッカーが好きだったことがある。正確に言うと、あるサッカー選手のファンだった。その選手というのが、カズこと三浦知良選手だ。中学生の頃、毎朝待ちあわせをして通学していた友人がカズの大ファンだった。彼女は、それまで全く興味のなかったサッカー雑誌を買うようになった。彼女の話を聞いているうちに私もカズを好きになった。あのころ、同じ年頃の女の子のほとんどがカズのファンだったんじゃないかと思うくらい大人気だった。当時Jリーグは盛り上がりを見せており、地上波で試合の放送を観ることも出来たと記憶している。しかし、やがて私の興味は他(好きなバンドとか)に移った。いつからかキングカズと呼ばれるようになったカズは、今も現役のサッカー選手だ。

 

さて、今はサッカーにはそれほど興味のない私だけれど、津村記久子の『ディス・イズ・ザ・デイ』(朝日文庫)を読んだ。2019年のサッカー本大賞受賞作ということだが、私がこの小説を読もうと思ったのは、もちろんそれが理由ではない。津村記久子の小説が読みたいからだ。好きな作家は何人かいるけれど、私が今、最も好きなのは津村さん。とにかくどれを読んでも良いのだ。

『ディス・イズ・ザ・デイ』は国内のサッカー2部リーグの様々なチームのファンの話で、全11話+エピローグからなる。詳しくないので、てっきり実在するチームかと思ったが、三鷹ロスゲレロスも桜島ヴァルカンも架空のチームだ。しかし、見覚えのあるチーム名があった。それはカングレーホ大林。津村さんの『この世にたやすい仕事はない』に出てきたサッカーチームだ。それはともかく、サッカーの試合の描写はもちろんあるが、『ディス・イズ・ザ・デイ』は、ある日のサッカーファン、あるいは彼らの日常を描いた小説だ。だから、これを読むのはサッカー好きでもそうでなくてもいいと私は思う。

 

ちょっとでもどこかのクラブの応援を始めたらわかってくる。チームにはきっといいことも悪いことも待っているだろう、でもそれを承知でついていくのだ。いい時も悪い時も。

 

今、好きなサッカーチームがあるわけではないけれど、全く別のジャンルに“推し”がいるので、この「いい時も悪い時も」という気持ちはとてもわかる。いい時も悪い時も好きなものは好きだし応援したいと思う。

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