池波正太郎『池波正太郎の映画日記』少年のように胸を踊らせ、時にはステッキをついて試写室へ

スーパーの入口でアルコール消毒をした時に、アルコールが斜めがけにしていた革のバッグにかかってしまった。革製品にアルコールはNGなので、いつも気をつけてバッグを後ろに回していたのだけど、うっかりしていた。その後テンションだだ下がりで買い物をした。塩サバが安かったので買った。美味しかった。

 

池波正太郎『池波正太郎の映画日記』(講談社文庫)Kindle版を読んだ。

この映画日記は、1978.2〜1984.12に書かれたもので、三冊を一冊にまとめたもの。「*月*日」とあるので、いつ書いた日記なのかわからないけど、季節くらいは何となくわかる。

ここしばらくのお風呂本として、ちょっとずつお風呂で読んだ。

映画日記とあるように試写会で観た映画の感想が主なのだけど、他にその日に食べたもの、本、音楽、猫などについても書いてあって、私は特に食べものについての記述を興味深く読んだ。映画日記なのに(笑)

 

例えばこんな風に書いてある。

 

夜は、牛細切れのすきやき。野菜はネギのみである。先ず、ネギを並べ、割下をそそぎ、沸騰したところへ肉を入れ、すぐに引出して食べるのが、このごろの私のやり方だ。

 

夜は、間鴨を赤ブドウ酒につけておいて、鉄板で葱と共に焼く。酒二号半。あとは豆腐の吸物と千枚漬で飯。夜半、餅を三片食べてしまい、しまったとおもったが、別に何でもなかった。神経痛は回復しつつある。

 

池波正太郎は1923年1月25日生まれだから、55〜60歳頃の日記だと思うのだけど、とにかくよく食べる。

 

帰りに神田・須田町の〔まつや〕へ寄り、天ぷらそばで酒をのんだ後、カレー丼を食べたのには、われながらおどろく。

 

池波先生(以下、池波先生と書くことにする)は食へのこだわりが強いので夫人は大変だったろうなあ、などと思っていたら、こんなことが書いてあった。

 

帰宅し、入浴して書斎へ入ると、家人が浮かぬ顔をして、
「夜食は何にしますか?」
と、いう。
「サンドイッチを買って来たよ」
こたえるや、とたんにうれしそうな顔になり、
「エヘヘヘ……」
と、笑う。
女は、よほど台所へ入るのが面倒らしい。

 

いやそれは池波先生の夜食だから余計に面倒なのですよ、とツッコミをいれたくなる(笑)

 

先生は、しっとりとした名作映画しか観ないのではないかと思っていたのだけど、『スター・ウォーズ』、『E.T.』、『48時間』なども観ていて親近感がわいた。

ニック・ノルティとエディ・マーフィのアクション映画『48時間』が面白かったらしく、その日の日記の最後を次のように締めくくっている。

 

申し分のないサスペンス。すっきりと、気分爽快となって外へ出る。
今日は青空ものぞいた。
ステッキをつきながら、のんびりと銀座を歩み、夕飯をすませ、アーウィン・ショウの新刊短篇集〔緑色の裸婦〕を買ってから、タクシーで帰る。

 

池波先生は、痛風に悩まされていて、ステッキをつかなければいけない日があったりもする。それでも映画を観に出かけるのだから、本当に映画が好きなのだろう。試写会のはしごもざらで、とにかく映画を観ている。

 

年末年始は試写がなかったので、少年のように胸を踊らせ、銀座の試写室へ、ハンガリー映画の〔だれのものでもないチュレ〕を観に出かける。

 

私は剣客商売シリーズ以外の池波作品を読んだことがなかったのだけど、この映画日記はとても楽しく読んだ。それで、『池波正太郎の銀座日記』(新潮文庫)Kindle版も買った。しばらく積んでおくことになりそうだけど、これもいずれお風呂で読む予定。

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