すっかり秋だと思っていたのに、今日は夏が戻って来たかのような蒸し暑さで思わずエアコンのリモコンに手を伸ばす。扇風機をしまうのはもうしばらく後にしよう。
昨日寝る前に読み始めた柚木麻子の『けむたい後輩』(幻冬舎文庫)を読み終えた。
そもそも百合っぽいという噂で興味を持ったのだけど、確かに百合っぽい…かな。主な登場人物は女子大生3人。14歳の時に詩集を出版して注目を浴びるもその後は目立った創作活動をしないまま大学生になった栞子、栞子の熱烈なファンで一つ年上の彼女目当てに同じ大学に入学した病弱なお嬢様の真実子、真実子の幼なじみで彼女の世話を焼く容姿端麗な美里。
真実子は、4年間の大学生活の全てを栞子に捧げたと言っても過言ではないほど栞子の言いなりで、栞子に呼ばれればいつでもどこにでも駆け付けた。一方、栞子にとって真実子は自分は特別な存在なのだと思わせてくれる存在だった。そんな栞子の心の内を見透かしていた美里は真実子を振り回す栞子がとにかく気に入らない。真実子から栞子への想いはその言動から明らかで分かりやすいが、実は美里こそ真実子に特別な想いを抱いているのではないかということが読み進めていくうちにわかってくる。最初は幼なじみで親友の真実子を栞子に取られるのが嫌なだけだと思っていたけれど、どうもそれだけじゃなさそう。
「真実子、ありがとう」
抱きしめたまま、美里は強く言う。どうして、いまだに恋人が出来ないのかわかった気がする。どんな男も結局、真実子に劣るのだ。楽しさ、優しさ。何をとっても。
最近はちびちびと本を読み進めることが多かったけれど、久しぶりに一気読みさせられた。いやあ面白かった。しかし、登場人物の誰一人好きになれなかったし感情移入も出来なかった。それにバッドというほどではないにせよハッピーエンドではなかったけれど、読後感は不思議と悪くなかった。たぶんまた読み返すだろう。