『女のいない男たち』を読んだらやっぱり村上春樹っていいよねってなった

ミスドのオールドファッションのカロリーが実は結構高いのだと知って驚いた。ホイップクリームたっぷりのエンゼルフレンチやエンゼルクリームを好んで食べる夫に「そんな甘いのよく食べるね。カロリーの塊だよ」などと言いながら、私は見た目は地味で素朴な味のオールドファッションを何の罪悪感もなく食べていたのだ。ちなみにミスタードーナツのホームページによると、オールドファッションは293kcal、エンゼルフレンチは192kcal、エンゼルクリームは204kcalということだ。まさか、あのエンゼルクリームよりもカロリーが高いとは。誰か嘘だと言ってくれないか。しかし、それでも私はこれからもオールドファッションを食べるだろう。だって、好きなもんはしょうがない。

 

村上春樹『女のいない男たち』(文春文庫)を読んだ。

未読だった『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』を読んだら、これがよくって、それならと、これも未読だった『女のいない男たち』を買って読んだのだけど、これもよかった。私はやっぱり村上春樹が好きなんだな、合うんだなと一人で勝手に納得した。

『女のいない男たち』は、「ドライブ・マイ・カー」、「イエスタデイ」、「独立器官」、「シェエラザード」、「木野」、「女のいない男たち」の6つの短編を収録した短編集。

「ドライブ・マイ・カー」が映画化されることは知っていたけれど、先日そのキャストが発表された。主人公の家福を演じるのは、西島秀俊さんだそうだ。家福は女優の妻を亡くした中年の俳優。妻は正統的な美人女優であったのに対して性格俳優の家福の外見は「顔はいささか細長すぎるし、髪は若いうちからもう薄くなり始めていた」とあった。西島さんは家福を演じるには、いささか整いすぎているのではないか。そんなことを思ったけれど、読み終えてから知ったので、「ドライブ・マイ・カー」を読んでいる間に私の頭に浮かんだ家福は冴えない男だった。

どの短編も面白く読んだけれど、特にいいなと思ったのは「イエスタデイ」と「木野」。どの作品にもどちらかというと陰気な男が出てくることが多い中で「イエスタデイ」に出てくる東京育ちだけれどほぼ完璧な関西弁を話す木樽という男が陽気で、それが気に入った。

 

あえて欠点をあげるとすれば、顔の造作が全体的に華奢なせいで、「この男は個性や主張にやや乏しいかもしれない」という印象を人に与えそうなところくらいだ。ところがいったん口を開くとそういう第一印象は、元気の良いラブラドール・リトリーバーに踏みつけられた砂の城のように、あっけなく崩壊してしまう。その関西弁の達者なしゃべりと、よく通る甲高い声に、人々はあっけにとられた。なにしろ外見とのミスマッチが甚だしかった。その落差に僕も最初のうちはずいぶん戸惑ったものだ。

 

「元気の良いラブラドール・リトリーバーに踏みつけられた砂の城のように」というフレーズに、村上春樹だなあと思いながら読むのも楽しかった。

 

「木野」は、ちょっと怪談っぽい不思議な話。本を読む男が出てくる。

 

家の本棚に並んでいる村上春樹をいろいろと読み返したくなったけれど、今は柴崎友香の『千の扉』を読んでいて、数ページ読んで、これは私の好きなやつだと確信したところ。

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