朝から雨がしとしと。明日の朝食用のシャウエッセンを買いにスーパーに行こうかと思っていたけれど結局やめた。全部雨のせいだ。
そんなわけで読書。少しずつ読んでいた競輪場を舞台にした短篇集、佐藤正午『きみは誤解している』(小学館文庫)を読み終えた。
父が競輪が好きで、私もたまに一緒にテレビでレースを観ていたこともあって、ルールや専門用語それに有名な選手なら名前も知っている(神山雄一郎、吉岡稔真など)ので、作中に出てくるそれらは難なく理解できた。もちろん、わからなくてもこの短篇集の面白さには大して影響しないだろう。それに巻末には付録として作者自身による競輪用語解説がある。
短篇集の最後に収録されている『人間の屑』。ある出来事をきっかけに車券を買わずにレースを観るだけになった弟と恋人の金を勝手に持ち出してまで勝負する兄。人間の屑はどちらかといえば、まあ兄なのだろうが、そんな兄が弟に発した「競輪をやる人間としては、おまえはクズだ」という一言に妙に納得してしまった。
それにしても佐藤正午の描く男はどうも好きになれない。じめっとしてるのだ。それにひきかえ女はカラッとしている。『きみは誤解している』には女性の競輪ファンというかギャンブラーが何人か登場するが、勝負に対して潔く、勝負師という言葉が似合うのは男たちよりも彼女たちのように感じた。
それについては文庫の新装版解説で三橋暁さんが「しかし、佐藤正午の描く女ギャンブラーは、なぜこんなにも凛々しいのだろう」と書いているので、そう感じているのは私だけではないようだ。
『きみは誤解している』を読んで『永遠の1/2』を読み返したくなった。
競輪についてはほんの少し知っているという程度で特別好きというわけではないのでこれまで手を出さずにいた競輪エッセイ『side B』も何だかちょっと読んでみたくなった。