滝口悠生『高架線』シャワーと和式便所のユニットバス!?

夫に促されて数年ぶりに人間ドックの予約をした。健康診断は一昨年受けたけど昨年は受けていない。人間ドックだって受けた方がいいとわかってはいるのだけど、数ヶ月先なのに今から憂鬱。母が毎年健康診断の前にダイエットしていると話すのを聞いて、そんなの意味ないじゃんと笑っていたけど…私も人間ドック前にダイエットしようかな。

 

滝口悠生『高架線』(講談社文庫)を読んだ。

語り手は、西武池袋線の東長崎駅から徒歩5分ほどのところにあるおんぼろアパートかたばみ荘の二階手前の部屋に住む住人や住人の友人・知人たち。かたばみ荘の家賃は三万円で敷金礼金、管理費なし。ただし、退去の際に次の入居者を自分で見つけなければならないという変わった決まりがある。

かたばみ荘がどんなアパートなのかちょっと長くなるけれど引用してみる。

 

かたばみ荘は木造の二階建てで、一階と二階に二部屋ずつあった。各部屋の間取りは、他の部屋をちゃんと確かめたことはないがたぶん全部だいたい同じで、六畳の板の間と、二畳くらいの台所がある。床も壁も剥がれたり破れたりでぼろぼろだった。歩けば床板がしずみ、壁に寄りかかればそこばかりでなく建物全部がたわむのか、思わぬ場所からぎい、と音が鳴ったりした。風呂とトイレもちゃんと各部屋についている。ユニットバスと言えば聞こえはいいが、やたら広い風呂場にシャワーと和式の便所がある珍奇な風呂場だった。換気扇がなく、廊下に面した壁にこぶし大の穴が空いているだけだったが、案外とそれで換気はちゃんとできていた気がする。

 

藤子不二雄Aの『まんが道』を読んで以来、古いアパート(〇〇荘という名であればなお良い)が出てくる漫画や小説が私は好き(実際に住みたいわけではない)なのだけど、このかたばみ荘はまさに私好みのおんぼろ具合だ。

それにしても気になるのは風呂場だ。風呂場についてはこんな説明もあった。

 

この部屋の風呂とトイレは、やけに広くて石のタイルが敷かれた風呂場に、和式便所が備わっていた。部屋が六畳なのに、風呂場も六畳くらいあって、どういう事情であんな変な風呂場ができあがるのだろうか。

 

何とも奇妙な風呂場だ。シャワーはともかく、これでは落ち着いてトイレを使えないと思うのだが。

この小説では、「新井田千一です」、「七見歩です」というように、まず語り手が名乗ってから語りだす。語り手は、かたばみ荘の二階手前の部屋の住人だったり、そうでなかったりする。例えば住人の友人だったり、住人の友人の妻だったり、住人が通う喫茶店の店長だったり。

終盤になると語り手の一人がある古い日本映画の内容を語りだすのだけど、これが結構長い。映画の内容がすっかりわかるくらいに。私はその映画『蒲田行進曲』をちゃんと観たことはないけれど、ずっと昔にテレビで放送した時にちらっと観たことはあるし、大筋は知っていたので、へえと思いながら読んだ。そして、終いには『蒲田行進曲』を観たくなった。たぶん観ないと思うけど。

これまで滝口悠生の小説で唯一読んだことのある芥川賞受賞作『死んでいない者』が私はそれほど好きというわけではなく、まあまあ好きくらいの感じだったのだけど、『高架線』はなかなかよかったというか、かなり好き。読んでいる途中で、いつかまた読み返したくなる小説だなと思った。

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買った本

山﨑努『柔らかな犀の角』(文春文庫)Kindle版購入。

WEB本の雑誌で私が更新を楽しみにしているのが「作家の読書道」。最新回で大前粟生さんが俳優の山崎努さんの『柔らかな犀の角』を紹介していた。紹介と言っても「なぜ手にとったのかは憶えていないんですが、俳優の山崎努さんの『柔らかな犀の角』という読書日記を読んだんです」というだけで、ほんのさらっとだけど。

しかし、日記好きの私としては気になった。しかも読書日記。すると、ちょうど『柔らかな犀の角』のKindle版が期間限定キャンペーンの対象で、ポイント50%還元になっていたので購入した。

購入前にどんなものか評判を調べようとTwitterで検索したら、山下智久さんのファンの方の感想がやたらとあった。どうやら『柔らかな犀の角』は山下智久さんの愛読書らしい。好きな人の好きな本を読みたいという気持ち、わかります。私の場合は主に好きな作家の好きな本だけど。

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