すぐに飽きるだろうと思っていた夫の料理が意外と続いている。台湾旅行に行ってから私が時々作るようになった魯肉飯を自分も作ると言って作りはじめた。ニンニクと八角の香りが漂いだしたと思ったら、夫が「これ砂糖だよね?」と聞いてきた。私はキッチンの続きにあるリビングにいたのだけど、流石にそこからは同じ容器に入った砂糖と塩は見分けられない。とりあえず「サラサラの方が砂糖だよ」と言ってみる。しかし、夫は私に聞いた時点で既に味見をして自分が砂糖と塩を間違えたことを確信していたようだった。私も一応味見をしてみた。ものすっごく塩辛かった。ここから魯肉飯になるとは、とても思えない味がした。仕方がないので汁を半分くらい捨てて、水をざぶざぶと足して和風だしの素を入れて、塩ベースのうどんスープにしてみた。ややクセは残ったものの案外美味しかった。夫は週末にリベンジすると言って豚ブロックを買いに行った。
霜月蒼『アガサ・クリスティー完全攻略〔決定版〕』Kindle版をセールで100円(税込110円)で買い、そこで満点の五つ星評価をされていたアガサ・クリスティーの『五匹の子豚』Kindle版をこれもセールで買った。
その『五匹の子豚』を読んだ。面白かった。
『五匹の子豚』は、私立探偵エルキュール・ポアロが主人公。ポアロが挑むのは、16年前に起きた殺人事件。序章で依頼人の女性がポアロの元を訪れる。しかし、女性はポアロの外見が自分がイメージしたのと違っていたことで、話を切り出すのを迷う。そんな女性の心理を見抜いたポアロは女性に向かって「わたしこそが、最高です」と自信たっぷりに言う。
そして、さらにこう続ける。
「いいですか、この稼業に必要なのは筋肉だけではありません。わたしの場合は、身をかがめて足跡のサイズを測ったり、吸殻を拾ったり、草の葉の倒れ具合を調べたりする必要はないのです。椅子にもたれて考えるだけで充分です。これなんですよ」ポアロは卵形の頭を軽く叩いてみせた。「これを使うのです!」
私はクリスティーの小説よりも先に中学生の頃に観たNHKのドラマでポアロを知った。だから、私の頭の中でこのセリフを言っているのはドラマでポアロを演じたデヴィッド・スーシェ(声は吹き替え)になるのだけれど、いかにもなセリフにニヤニヤしてしまった。
依頼人の女性カーラは、16年前に父親を殺害した罪で有罪になった母親が本当に犯人だったのか事件の真相を知りたいとポアロに再調査を依頼する。終身刑となったカーラの母親は、裁判から1年後に亡くなっている。依頼を引き受けたポアロは16年前の事件の関係者を訪ね、当時の話を聞く。さらに主な関係者5人に事件当時についての手記を書いてもらう。そして、ポアロは、足跡のサイズを測ったり、吸殻を拾ったり、草の葉の倒れ具合を調べたりすることなく事件の真相を明らかにする。
いや、面白かった。5人の関係者はもちろん全員あやしい。誰が真犯人かを予想しながら読んだのだけれど、私の予想は外れた。真犯人を突き止めたポアロの推理を知って、なるほど、あの場面のあれが実はそうだったのか!と膝を打った。そして、すぐに最初から読み返したくなった(読み返していないけれど)。
アガサ・クリスティーの小説の面白さを再認識した。
買った本
江國香織『物語のなかとそと』(朝日文庫)、柴崎友香『わたしがいなかった街で』(新潮文庫)購入。
3月の新刊文庫で楽しみにしていたのが文庫化を待っていた江國さんの散文集『物語のなかとそと』。
柴崎友香さんは好きで、文庫化された作品はほとんど買って読んでいる。この前、『千の扉』を読んで、やっぱり柴崎さんの小説いいなと思ったので、あらすじから何となく苦手かもと避けていた『わたしがいなかった街で』を買ってみた。