柴崎友香『百年と一日』一篇のタイトルがとにかく長い

日曜日に京都競馬場で宝塚記念が行われた。そして、私の好きな馬ドウデュースが負けた。雨で重くなった馬場でも他馬をねじ伏せて勝つ強いドウデュースが見たかったのだが、これが競馬。秋はどこへ向うのだろうか。

 

柴崎友香『百年と一日』(ちくま文庫)を読んだ。文庫化にあたって1篇増補の全34篇が収録されているのだが、果たしてこれを短篇集といってよいのか私にはわからない(筑摩書房のサイトには「新感覚の物語集」とある)。というのも一篇、一篇は独立しているのに、読み終えると、まるでひとつの物語であったように感じたから。なんだか不思議で面白い読後感だった。

面白いといえば一篇ごとのタイトル。たとえば最初の一篇はこうだ。

「一年一組一番と二組一番は、長雨の夏に渡り廊下のそばの植え込みできのこを発見し、卒業して二年後に再会したあと、十年経って、二十年経って、まだ会えていない話」

タイトルがほぼあらすじ。

他にも「大根の穫れない町で暮らす大根が好きなわたしは大根の栽培を試み、近所の人たちに大根料理をふるまうようになって、大根の物語を考えた」「アパート一階の住人は暮らし始めて二年経って毎日同じ時間に路地を通る猫に気がつき、行く先を追ってみると、猫が入っていった空き家は、住人が引っ越して来た頃にはまだ空き家ではなかった」など。

最初の一篇「一年一組一番と二組一番は…」を読み始めた時に、これは好きなやつだと感じた。読み終えてしまうのがもったいなくて、一篇ずつゆっくり読むつもりだったのに、次はどんな話なのか気になって、読みたくて、ずんずん読み進めてしまった。これはもう柴崎友香マイベスト3に入るほど好きだ。ちなみにマイベスト3の他の2作は『きょうのできごと』と『パノララ』。いや、でも『次の町まで、きみはどんな歌をうたうの?』も好きだしなあ。

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