あっという間に12月。私には縁がないが忘年会シーズンに突入した。忘年会スルーすることなく参加している夫。忘年会で美味しい韓国料理屋に行ったから今度行こうと言われ、先日喜んで出かけたら休みだった。すっかり韓国料理を食べる気でいたため、他の韓国料理屋を探して行ってみたのだけど、さすが忘年会シーズン。予約でいっぱいだと人の良さそうな店主に申し訳なさそうに断られた。結局何度か行ったことのある中華料理屋に行って大好きなエビチリとチャーハンを食べて満足して帰った。
津村記久子の『枕元の本棚』(実業之日本社文庫)を読んだ。
これまでにいろんな作家の書評集や読書案内を読んだけれど、興味のある本、読んだことのある本が紹介されている方が私は楽しめる。例え好きな作家が書いていても興味のない本の紹介が続くと読むのが辛くなってくる。そういう意味では堀江敏幸さんの『本の音』などは私には合わなかった。
『枕元の本棚』では58冊の本が紹介されているのだが、その中に私が読んだことのある本は1冊もなかった。しかも絵本、児童書、図鑑、自己啓発本といった私がほとんど関心のない本が多く、読みたいと思う本がたくさんあったわけでもないのになぜか最初から最後まで面白く読んだ。これは津村マジックなのか。
『枕元の本棚』で紹介されている本の中で私が読んでみたいと思った本は3冊。
『セイシュンの食卓』(1〜4) たけだみりこと東京ブリタニアン 角川文庫
「第二章 ごはんと生活」で紹介されている。
一巻をぱらぱらめくるだけでもたまらなくなる。レトルトハンバーグを潰してゆでたパスタにのっけて食べる「デラックスミートソース」、あつあつのごはんに大根おろしと揚げ玉とそばつゆをかけただけの「カンタンたぬき丼」、食べ飽きたクッキーに生クリームやチョコレートをはさんだ「クッキーケーキ」、固形スープで沸かした湯にパスタと野菜と肉を適当に放り込んでケチャップで味付けするだけの「スパナベ」。えっ、それで料理なの?という感じなのだが、これがどれもおいしい。
津村さんの紹介文を読んだだけでたまらなくなる。しかし、残念ながら本書で紹介されている角川文庫の『セイシュンの食卓』は絶版のようだ。
『読書案内 世界文学』 サマセット・モーム 岩波文庫
「第三章 開いたページを読んでみる」で紹介されている。
今年こそは何か古典文学を、と思いついて、本屋さんを訪ねて本棚の前に立った途端、何を読んだらよいかわからなくなって早々と退散してしまった、という経験が、わたしには何度かあるのだけれども、これをお読みの方々も、少しは身に覚えがあるのではないだろうか。
身に覚えあります。
『読書案内』の中身の文体についてはこう書いている。
中身の文体もまた、大上段に構えたところはなく、丁寧なのにときどき辛辣ではあるので、近所の本屋の本棚の前で「この作家はね」と紳士の姿をした本の妖精にでも案内されているような気分になる。
『マーク・カヴェンディッシュ』 マーク・カヴェンディッシュ 未知谷
「第六章 スポーツの本」では予想通りサッカー関連の本が続いたのだけど、最後の2冊が私も興味があるロードレース関連の本だった。
そのうちの1冊がテレビで観戦したツール・ド・フランスで見たことのある選手、マーク・カヴェンディッシュの自伝。
「ここがおもしろかった」と抜き書きしようにも、ほとんど全ページがおもしろいといっていいぐらい、内容は濃い。マン島の離婚家庭出身の、ただ自転車が好きなだけで何者でもない感情丸出しのヤンキーが、人並み外れた才能と努力と情熱と執念で勝って勝って勝ちまくる。そこに至るまでには、無数の挫折があり、罵声も呪いも浴びている。
『枕元の本棚』には読書案内としてというよりもエッセイとしてまた読み返したくなるような面白さがあった。