梨木香歩『雪と珊瑚と』(角川文庫)読了。
書店で各出版社の文庫フェアのコーナーを見て回って、目についたのがカドフェスのコーナーにあった梨木香歩の『雪と珊瑚と』だった。
実は、本のタイトルに惹かれたのではなく「食べること、生きることの意味とは」という帯の文句、特に「食べること」に惹かれて手に取り、ざっとあらすじを読んでみたら面白そうだったので買ったのだ。
梨木香歩さんの本を読むのは久しぶり。小説やエッセイを何冊か読んでいるが、一番好きなのは『西の魔女が死んだ』だ。
その『西の魔女が死んだ』のような柔らかな感じを期待して『雪と珊瑚と』を読みはじめたのだけれど、読むうちにこれは違うと感じた。私にとって『西の魔女が死んだ』がミルクチョコレートだとすると、『雪と珊瑚と』はビターチョコレートだった。ブラックまではいかないけどちょっとほろ苦いビター。
21歳のシングルマザー珊瑚が赤ん坊の雪を抱えて途方にくれていた時に偶然見つけた「赤ちゃん、お預かりします」の貼り紙。その貼り紙を貼った年配の女性くららと出会ったことで、珊瑚の人生が変わっていく。
お金も資格も何にもない珊瑚がカフェを開くなんていうと、何だかおとぎ話のようだが、なかなかどうして色んな問題が次々と起きるものだから、起業するというのはやはり一筋縄ではいかないものなのだなぁと思いながら読んだ。
『西の魔女が死んだ』との共通点もある。『西の魔女が死んだ』のおばあちゃんと『雪と珊瑚と』のくららの「食べること」つまり料理に対する丁寧さ。それは何も手の込んだ物を作るという意味ではない。
例えばくららが作った大根の茹で汁に塩を入れただけの汁。それだけのものなのに何だか優しさを感じるのだ。
『雪と珊瑚と』を読んだせいか、いつもチャチャッと作っている夕ごはんのおかずを今日はちょっとだけ丁寧に作ってみた。明日からはまたいつも通りだろうけど。
本棚食堂
NHK・BSプレミアムで放送された2次元グルメドラマ『本棚食堂』を観た。以前放送されたのも観たけれどまた始まったらしく、今度は4週連続で放送される。
第1話では阿川佐和子の『魔女のスープ 残るは食欲』に出てくるニラ豚が美味しそうだった。しかし、夜中のドラマで美味しそうな食べ物を見せられるのはつらい。
次週は「パスタ編」ということでこれまた楽しみ。