伊坂幸太郎『サブマリン』はた迷惑だけど、いいことも言う陣内さん

買い物に行こうとしていつもの場所に車の鍵がないことに気付いた。そういえば昨日、夫が車で仕事に行ったんだっけ。どうやら車の鍵を鞄に入れたまま出かけたらしい。スペアキーはあるけど電池が入っていない。電池が入っていなくてもエンジンをかける方法は説明書に書いてあるのだけど、もしも帰る時にエンジンが上手くかからなかったらどうしようなどと考えてしまって試したことはない。トイレットペーパーがなくなりそうだったので、どうしても買い物に行かなければならず、結局、歩いて近所のコンビニに行った。せっかくなので運動しようと思っていつもより大股で歩いたら暑くて汗をかいた。ついこの間まで満開だった桜はもうすっかり散ってしまっていた。

 

伊坂幸太郎の『サブマリン』(講談社文庫)を読んだ。

大好きな『チルドレン』の続編ということで文庫化を楽しみにしていた。今度は長編。『サブマリン』には陣内、武藤、永瀬、優子といったおなじみの面々が年齢を重ねて再び登場する。変わらない彼らに懐かしさを覚えた。特に陣内。相変わらず武藤や永瀬を振り回すはた迷惑な陣内だが、そんな彼が放つ言葉にハッとさせられるのも前作と変わらない。

家裁調査官の武藤は無免許運転で死亡事故を起こしてしまった少年を担当することになるのだが、実は少年は過去に両親と友人をいずれも交通事故で亡くしていて、そのことが少年の起こした交通事故と複雑に絡みあっていることが徐々に明らかになる。その真相に武藤を導くのが陣内。重いテーマ(重いだけでなく深い)でどんよりしてしまいそうなところだが、そこは陣内の破天荒なキャラ、そして、そんな陣内と武藤の軽妙な掛け合いを挟むことでちょうどいい感じになっている。

 

誰に比べて、というわけではないが、明らかに不公平じゃないか。
誰かに物申したい、少なくとも、問い合わせたい気分になる。
どうしてこうなっているんですか。
どうにかならなかったんですか。
クレームではないんです、教えてほしいだけなんですよ。
ただ、それができない。僕は知らず、空を見上げてしまう。問い合わせ窓口、どこにあるんですか、と訊ねたくなるが、そのこと自体を問い合わせることができない。

 

伊坂さんはインタビューで続編はないと話していたけれど、いつかまた陣内たちに会えたらいいな。

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