『警部補アーノルド』からの『河岸忘日抄』

私の中のイギリス刑事ドラマブームは続き、『ロンドン警視庁コリン・サットンの事件簿』、『ブロードチャーチ』シーズン1&2と観た。特に『ブロードチャーチ』シーズン1は救いのない結末で犯人がわかった時には「ひぇっ」となった。

ちょっと前に観た『警部補アーノルド チェルシー捜査ファイル』のアーノルドは、妻と別居中でハウスボートに住んでいるのだけど、それで、ふいに堀江敏幸の『河岸忘日抄』(新潮文庫)を読みたくなったので、読んだ。堀江敏幸マイベストの不動の1位は『いつか王子駅で』なのだけど、2位は今のところ『河岸忘日抄』だと思う。

なぜ『河岸忘日抄』を読みたくなったのかというと、主人公である「彼」が河岸に繋留された船に住んでいるから。ただし、「彼」が住む船はイギリスではなくフランスの川に浮かんでいる。

 

季節はずれの海辺の街や、ひと気のない山あいの宿で真っ暗な夜を過ごすために駅まえのさびれた書店に駆け込んで、どれほど真剣に棚を見つめてもろくなものがなくてしぶしぶ買い求めた既読の文庫本や、雨に降られてしかたなく入った公立図書館の、開架書庫にならんでいるたわいもない小説になぜか惹きつけられて数時間を過ごす、という経験が彼にはこれまでいくどもあった。再読や再々読の機会は、そのように強いられた状況のなかでしか訪れないのかもしれない———たとえばこの船のような。

 

私は、船に住んでいるわけではないけれど、引っ越しで本棚の本を段ボール箱に詰めた時に、これもあれも読み返したいと思ったこともあって、ここ最近は『河岸忘日抄』のような既読本ばかり読み返している。本棚の前で次はどれを読もうかと迷うのが楽しい。

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買った本

最近、読書熱だけでなく映画熱も上がっていて、前から気になっていた松田青子『読めよ、さらば憂いなし』(河出書房新社)をとうとう買った。単行本の初版は2015年10月。文庫化をずーっと待っていたのだけど、その気配がないので諦めた。

今、読んでいるところだけど面白い。

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