アマプラで観たイギリスの刑事ドラマ『刑事シンクレア シャーウッドの事件』がよかったので、続けて同じくイギリスの刑事ドラマ『警部補アーノルド チェルシー捜査ファイル』を観て、その後さらに『埋もれる殺意 39年目の真実』、『埋もれる殺意 26年の沈黙』、『埋もれる殺意 18年後の慟哭』を観た。この「埋もれる殺意」シリーズは、なぜか吹替版しか配信されておらず、海外映画やドラマは字幕派の私は最初観るのをためらったのだけど、とりあえずの気持ちで観た『39年目の真実』がすごくよくて、続けて『26年の沈黙』、『18年後の慟哭』と時系列順に観た。『刑事シンクレア シャーウッドの事件』などは特に陰鬱で、面白いと言っていいのかわからないのだけど一気見してしまった。
イギリスのドラマを続けてみたせいか、イギリスの小説が読みたい気分になったので、本棚からジェローム・K・ジェローム/丸谷才一訳『ボートの三人男』(中公文庫)を引っ張り出して、読んだ。
何年かぶりに読むので、細かい内容は忘れてしまっていたけれど、読みはじめからクスッと笑えて、そういえばこの小説はこういう感じだったなと思い出しながら読み進めた。
ぼくは今まで、特許をとっている薬の広告を読んで、おれはこの病気にやられている、しかも極めて猛烈に冒されている、という結論に到達しなかったことは一度もないのである。徴候として書いてあるものは、あらゆる場合、ぼくが今まで味わったことのある感じに、ぴたりと一致するのだ。
私も何かの病気の症例を目にすると、ひょっとして…と思いがちなので、いつの時代(この小説が書かれたのは1889年)も人は同じなのだと思うとおかしくもあり、ちょっと安心したりもした。
『ボートの三人男』を読む合間に青木るえか『主婦の旅ぐらし』(角川文庫)をパラパラめくって読みたい箇所を読んだりした。
青木さんの主婦シリーズ(?)は、他に『主婦でスミマセン』、『主婦は踊る』の文庫も持っていたけれど、引っ越しを重ね、厳選して手元に残ったのは『主婦の旅ぐらし』だけ。というのも、定期的に読み返したくなるエッセイが収録されているからで、それは「武田百合子と洋菓子の旅」というエッセイ。
旅打ちで笠松競馬場に行った著者は、街の本屋で武田百合子の『遊覧日記』を買う。そして、宿で洋菓子屋で買ったケーキを食べながら『遊覧日記』を読むのだけど、店でもらったプラスチックの匙で箱からじかに食べるものだからクリームやスポンジがぼろぼろ落ちて本はケーキくずまみれになる。でも、著者はそんなことは気にしない。私は、どちらかというと本を汚したくないタイプなので、本がケーキくずまみれだなんて想像しただけでぞっとするけど、その続きに「翌日も、笠松競馬場でずっと読んでいた。すぐ読める本だけれど、好きな本はなんべんも繰り返して読むので。」とあるのがいい。とにかくこのエッセイがものすごく印象に残っていて、たまに読み返したくなるのだ。
文庫本は絶版のようだけど、いつの間にか電子書籍化されたようでKindle版があった。