いつか王子駅で

horse151024

堀江敏幸『いつか王子駅で』(新潮文庫)読了。

堀江さんの小説の中で一番好きな作品。それほど長大でもなく気軽に読み返せることもあって、もう何度も読んでいる。

主人公の「私」は、アパートを探すのに書籍類がむやみに多いので木造ではなく鉄筋コンクリート、大事な本の陽焼けを防ぎたいから陽当たりの悪い部屋という条件を出すだけあって、作品中に様々な作家や小説の話が出てくる。それも興味深いのだけど、私が惹かれるのはそれらと同じかそれ以上に頻繁に登場する競馬あるいは競走馬の話だ。

咲ちゃんの陸上競技会があるという秋のスポーツシーズンは、私のなかではつねに今日のような日曜日の午後の、現実の光景ではなくブラウン管のなかの映像とふかく結びついている。プロ野球日本シリーズの第七戦。日本オープンゴルフの最終日最終組の十八番ホール。菊花賞から有馬記念にかけての、クラシック・レースの第四コーナー。鮮烈な印象を残している場面は、いつも茜色の背景のなかにあった。ところどころ地肌が見えている芝ぜんたいにうっすらと紅が差し、それがやがて濃い朱色の光線を照り返すまでになるこの時期が私のシーズンなのだ。

明日はその菊花賞が行われる。

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新刊文庫メモ

購入予定のこれから発売される新刊文庫。11月は何と言っても『安達としまむら5』が楽しみ。

10/28 村上春樹『村上春樹 雑文集』(新潮文庫)
11/10 入間人間『安達としまむら5』(電撃文庫)
11/13 長嶋有『佐渡の三人』(講談社文庫)

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