綿矢りさ『手のひらの京』綿矢版『細雪』という惹句にひきつけられて読んでみた

連日の暑さにお腹が弱いのを忘れて、アイスを食べ、冷たい飲み物をがぶ飲みしていたら、案の定お腹を壊してしまった。しばらくお粥やうどん、ゼリーを食べて、常温か温かい飲み物を飲むことにする。あー、でも、やっぱりアイス食べたい。冷凍庫に夫が買ってきたパルムのストロベリーの箱が入ってるのだけど、箱に「いちご感アップ!」と書いてある、そのアップしたいちご感を味わいたい。

 

綿矢りさ『手のひらの京』(新潮文庫)を読んだ。

『生のみ生のままで』がものすごくよかったので、もっと綿矢作品を読んでみたくなり、前から気になっていた『手のひらの京』を読むことにした。

『手のひらの京』が気になっていた理由は、綿矢版『細雪』という惹句。あらすじを読んでみると、どうやら三姉妹の物語であるとわかった。自分が姉妹(姉と私)ということもあって、姉妹を描いた小説が私は好きなのだ。

長女・綾香は、図書館勤務。恋人はいないが三十歳を過ぎて結婚を意識している。次女・羽依は大手企業の新入社員。自分の外見に自信満々な恋多き女で、入社後すぐに上司と付き合い始める。三女・凛は大学院生。恋愛にあまり興味がなく、就職を機に京都から出たいと家族には内緒で考えている。

三姉妹は両親と一緒に京都の実家に住んでいる。

 

三姉妹の母親は、父親の定年のタイミングで「私も主婦として定年を迎えます」と宣言する。

 

「三人もの子どもの毎食のご飯、お弁当、ほかのお世話もすべて、母さんは大変がんばってやってきました。もう十分。名入りの包丁も重い木のまな板も、油の焦げ付いたコンロも当分は見たくない。これからは趣味の料理だけ、したくなったらします。朝と昼ご飯は各自で、お夕飯はあんたらで作りなさい」

 

この母の宣言に対する三姉妹の反応はそれぞれ。

「話ってそれだけ?友達と電話してる途中だから、部屋戻るね」と言って自室に戻る羽依。

「いいんじゃない。私もなるべく大学で食べてくるようにするし」とどこか浮き浮きする凛。

「母さん、いままでありがとう」と礼を言う綾香(に続いて慌てて頭を下げる父親)。

 

凛も礼を言いたかったが、ついタイミングを逃した。社会人の綾香にくらべて、大学生で母に手料理卒業宣言を下された羽依や自分は、かなり不憫なのではないかという拗ねた思いが、心をかすめていたからだ。

 

私も学生の頃は、母親が料理やその他の家事をしてくれて当たり前みたいに思っていたなあ、というようなことを思い出した。自分で家事をするようになって初めて、その大変さを知った。昔に戻れたら、母を手伝うだろうか?たぶん私は甘えたままだろうな。

などということを思いながら読んだ。綾香と羽依それぞれの恋模様、凛の就職問題などいろいろあるけど、姉妹を描くということは、家族を描くことでもあるから、谷崎潤一郎の『細雪』もそうだけど、『手のひらの京』は家族小説でもあるのだ。

 

これまで『ひらいて』、『生のみ生のままで』と綿矢作品を読んで、食べものが印象に残ったことがなかったのだけど、『手のひらの京』では綾香の作るハヤシライスとかいろいろと美味しそうな食べものが印象に残った。

綾香が祇園祭の屋台で買って食べた鮎の塩焼きもそう。

 

たっぷり塩をふった鮎が尾っぽから口までを串刺しにされて、表面をこんがり焼かれていた。屋台だと侮るなかれ、大きめのししゃもを鮎と言って売っているわけでもなく、かじるとちゃんと鮎の若々しい味がする。ソースにシロップと、べたべたな濃い味が多い屋台ものに比べて、鮎の塩焼きの風味は淡白で、暑いなかにいて川の涼やかさも思い出せる。

 

最初に読んだのが『ひらいて』だったからか、綿矢作品には、少し怖いようなヒリヒリする激しさがあるというイメージを持っていた。でも、『手のひらの京』は、羽依の恋愛絡みでちょっとゾッとするような出来事が起きたりするけど、どちらかというと穏やかで私好み。京都いいなあ。

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