週末は台風のせいで家から一歩も出ることができなかった。ようやく台風が通り過ぎた3連休の最後にお寿司を食べに行った。ぐるぐる回るお寿司。濃厚うに包みが美味しかった。
江國香織の『ホリー・ガーデン』(新潮文庫)を読んだ。もう何度目かの再読。
久しぶりに読んだ『落下する夕方』が前に読んだ時よりもよかったものだから、じゃあ『ホリー・ガーデン』も読んでみるかと思って読んだら、これがまた前よりもよかった。『ホリー・ガーデン』はもともと小説そのものは好きで、だからこそ何度も読み返しているのだけど、『落下する夕方』と同じで登場人物は好きになれなかった。江國さんの小説に関してはそういうことが結構ある。
今よりも若かった頃は、昔の恋人のことを引きずりながら大して好きでもない男と寝る果歩のことも、不倫をしている静枝のことも好きになれないと言うか許せなかった。それが、私が年を取ったからなのか、今はそんな気持ちも薄らいで、穏やかな気持ちで読むことが出来た。恋愛に対してと言うか、全てのことに対して潔癖じゃなくなってきているのか、まあいいじゃんって思えるようになったみたい。それが良いのか悪いのかわからないけど。
小学校から高校まで同じ女子校だった果歩と静枝。ただ仲良しという感じではなくて、二人の間にはどこかピリピリとした緊張感が漂っている。ちょっと不思議な関係。
「でも、静枝さんてやわらかい顔もするんだね」
タンバリンについた飾り(それはこいのぼりのふき流しに似ていた)をもてあそびながら中野は言った。
「いつもああいう顔してればいいのに」
「……やわらかい顔、したの?きょう」
「うん。一度だけね。果歩さんがトイレにいっているとき」
果歩が表情をこわばらせたように見えたので、中野はあわてて言い足した。
「でももちろん、僕には果歩さんしか見えないけどね」
やわらかい顔、と果歩は胸の内で復唱する。やわらかい顔。静枝が果歩にそういう顔を見せなくなってから、もうどのくらいたつだろう。
果歩と静枝は会わなければいいのにと思うぐらい、会う度に不穏な雰囲気になっている。じゃあ仲が悪いのかと言えばそうではなく、果歩は静枝が自分には見せなくなったやわらかい顔を数回しか会ったことのない中野に見せたことにショックを受けてしまうほど静枝のことが好きなのだけど。
江國さんの色んな小説を読み返してみようかな。
買った本
三浦しをん『まほろ駅前狂騒曲』(文春文庫)、群ようこ『優しい言葉 パンとスープとネコ日和』(ハルキ文庫)購入。
どちらも文庫化を楽しみにしていたシリーズ作品。