キン肉マン、北斗の拳、奥田民生…長嶋有『愛のようだ』

4連休もあっという間の最終日。スーパーに買い物に行った以外はどこかに出かけるでもなく家で過ごした。買い物といえば、買おうかずーっと迷っていたKindle Oasis(32GB、wifi、広告なし、3ヵ月分のKindle Unlimitedつき)がAmazonのタイムセールで安くなっていたので、えいやっとカートに入れて、そのまま買った。Kindle Oasisはまだ届いていないけれど、早速Kindle Unlimitedで色々と読んでいる。主に百合漫画を。

 

長嶋有の『愛のようだ』(中公文庫)を読んだ。

長嶋有は好きな作家の一人で、いつもなら新刊文庫が発売されればすぐに買うのだけど、『愛のようだ』の《愛しさと哀しみを鮮明に描きだした恋愛小説》という内容紹介がピンとこなかったというか、今読みたい気分じゃない気がして、今月になってようやく買った。すると、文庫の帯にも《著者史上初「泣ける」恋愛小説》とあって、うむむとなった。しかし、読み始めたら割といつもの長嶋有でほっとした。いつものように固有名詞が出てくる出てくる。しかも世代が近い私にはドンピシャ。

 

後部座席の琴美が骨を鳴らすたび、俺は『キン肉マン』を思い出していた。まるで骨折のような立派な音なのだ。まず発進の際、その準備のように大きく鳴らし、環八に入るあたりでも。

 

「『私の骨はよく鳴るんだよ』」前を向いたまま、かつての、キン肉マンことキン肉スグルの言を俺は思わず諳んじた。正確ではないかもしれないが、そんなような台詞を彼は放った。

 

小学生の頃、私はよく漫画を買った。そして読んだ。お小遣いのほとんど全てを漫画に使ったのではないかと思う。本棚には少女漫画よりもむしろ少年漫画の方が多く並んでいた。大半がジャンプコミックスでその中に『キン肉マン』もあった。シルバニアファミリーとキン消しを集めていた。キン消しを戦わせるリングのようなものも買ってもらっていた。

主人公の戸倉は40歳で自動車の免許を取得。中古の日産ラシーンに友人を乗せて様々な場所へ行く。行くのだけど、描かれるのは目的地までの道中で、しかも主に車中の様子。車中で『キン肉マン』や『北斗の拳』の主題歌、奥田民生の「さすらい」などを流す。

 

続く「愛をとりもどせ」には高くビブラートをかけ、永嶺は道の遠くを見据えた。俺はアニメ『北斗の拳』オープニングのアウトロで主人公があり得ないほど強大な(存在感ではなくサイズが)敵に、あり得ない角度からの跳躍で挑んでいくシーンを思い出していたが、永嶺の横顔は完全にアニメ本編の、愛するユリアを助けにいく者の表情をたたえている。

 

戸倉が漫画評を書くライターであることから特に漫画の話題が出てくる。『キン肉マン』などはロビン・マスクとの戦いについて詳細に説明していたりする。これなら『キン肉マン』を知らない人にもある程度の雰囲気は伝わるのではないか。

それにしても一体どこが泣けるんだろうと頭の片隅で思いながら読んだ。私は泣ける恋愛小説を読みたいわけじゃないから別に構わないけれど。そもそも私は長嶋有の小説で泣いたことはないような気がする。泣けるから良い小説というわけでもないし。そう思っていたのだけど、エピローグでまんまと泣いた。文庫の帯にあった《著者史上初「泣ける」恋愛小説》という謳い文句は決して大げさではないかもしれない。

それはともかく車でどこか遠くに行きたくなった。しばらくは行けそうもないし、私は運転するよりもどちらかというと助手席に座っていたい方だけど。

『愛のようだ』を読んだら、やっぱり長嶋有っていいなってなったので、『佐渡の三人』(講談社文庫)を読んだ。でもエッセイはそこまで好きじゃないんだよなと思いつつ『いろんな気持ちが本当の気持ち』(ちくま文庫)も読み返したら、前に読んだ時よりも面白く読めた。エッセイもいけるかもしれない。

何しろ4連休で時間だけはあった(いやむしろ家事をする時間が増えたかも)から他の作家の好きな小説も読み返したくなって三浦しをんの『木暮荘物語』(祥伝社文庫)、江國香織の『間宮兄弟』(小学館文庫)も読んだ。『木暮荘物語』は内容をほとんど忘れていて、こんな話だったっけと思いながら面白く読んだ。『間宮兄弟』は江國さんの小説の中で一番好きで何度も読み返しているのだけど、やはりしみじみと良かった。

 

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買った本

佐藤正午『月の満ち欠け』(岩波文庫的)、穂村弘『現実入門』(光文社文庫)購入。

『月の満ち欠け』は買わねばと思いつつ機会を逃していてようやく買った。岩波文庫ではなく、岩波文庫的というのがなんか良い。『現実入門』は、ほむほむの未読エッセイが読みたくて。ほむほむのエッセイはキンドルにしようかなと思ったのだけど『現実入門』はキンドルになっていなかった。

『月の満ち欠け』の特別寄稿を伊坂幸太郎、『現実入門』の解説を江國香織が書いていて、私得だったりする。

 

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