休日のわりに早く起きて、近所のファミレスで朝食を食べた。モーニングメニューにこれといって食べたいものがなかったので、オムライスにした。家に帰ると夫はこの連休でクリアすると意気込んでドラクエを始めた。私はいつものようにゴロゴロしながら本を読んでいる。どこかに出かける予定は今のところ特にない。
最近のおふろ本(おふろで読む本)は、村上春樹の『村上朝日堂』(新潮文庫)。切りのよいところがすぐにやってきて、いつでもやめられるエッセイが私のおふろ本には適している。『村上朝日堂』を久しぶりに読んだら、その内容をすっかり忘れていて、初めて読むみたいに楽しめるから何だか得した気分。私はそんなに長風呂ではないので、ちょっとずつ読んでいて、今は半分ぐらい読んだところ。「聖バレンタイン・デーの切り干し大根」というエッセイを読んだら、無性に切り干し大根が食べたくなった。
家に帰って切り干し大根を一時間ほど水で戻し、ゴマ油で炒め、そこに八つに切った厚あげを入れ、だしと醤油と砂糖とみりんで味つけし、中火でぐつぐつと煮る。そのあいだにカセット・テープでB・B・キングを聴きながら、人参と大根のなますと、かぶとあぶらあげのみそ汁を作る。それから湯どうふを作り、はたはたを焼く。これがその日の夕食である。
バレンタイン・デーに村上春樹さんが作った夕食のメニュー。夫がこんな風にささっと料理をしてくれたら、嬉しいような、でも、ちょっと困るような。それにしてもカセット・テープというのが時代を感じる。
それから江國香織の『落下する夕方』(角川文庫)を、これも本当に久しぶりに読み返した。女同士の友情(と言ってよいのかどうかわからないけど)を描いた江國さんの小説は『ホリー・ガーデン』の方が好きで、『落下する夕方』はあまり好きではなかった。
主人公の梨果は8年付き合った恋人の健吾から突然別れを告げられる。二人で住んでいた部屋から健吾が出て行った後にやって来たのは、健吾が好きになった、つまり梨果と健吾が別れる原因となった華子。そして、一緒に住むことになった梨果と華子。華子に会いにやって来る健吾。
前に読んだ時は、華子と健吾の無神経さに腹が立ったし、いつまでも未練たらしく健吾を想う梨果にもイライラした。つまり主な登場人物の誰も好きになれず、これっぽっちも共感できなかったのだ。だけど、久しぶりに読み返してみたら、みっともないと嫌悪すらした梨果の健吾への未練や執着が、何だかわかるような気がしたのだ。みっともなくなんかないと感じるようになっていた。そうなると、後はもう江國さん独特の世界にどっぷりと浸ることが出来た。
「私ね、空は好きよ。海よりずっといい」
特に何ということはないかもしれないけれど、なぜか華子のこの言葉が残った。
あと、やたらとセブンアップが出てくるのだけれど、そういえば私は今まで一度もセブンアップを飲んだことがないということに気付いた。