貸していた傘

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金城一紀さん原案・脚本、綾瀬はるかさん主演のドラマが10月にスタートするようだ。金城さんが脚本を手掛けるドラマというと、アクションドラマというイメージがあるのだけれど、今度のドラマのタイトルは『奥様は、取り扱い注意』。どうやらホームドラマとアクションを融合させた作品になるらしい。楽しみだ。ちなみに今、私が観ているドラマは『警視庁いきもの係』と『遺留捜査』。

随分と長い間友人に貸していた藤原伊織の『テロリストのパラソル』がようやく返ってきた。そんなことを1年ちょっと前に書いた。

友人に貸していた藤原伊織の『テロリストのパラソル』
友人に貸していた藤原伊織の『テロリストのパラソル』がようやく戻ってきた。これで『本棚食堂』で観たホットドッグの作り方について読み返すことが出来る。

 

手元になかった時はあんなに読み返したいと思っていたのに、いざ返ってきたら、いつでも読めると思ってそのままになっていた。

で、久しぶりに読み返したら、内容をほとんど忘れていて驚いた。犯人も、犯行の動機もきれいさっぱり忘れていた。これは面白いと興奮しながら読んだはずなのに。

だけど、久しぶりに読んだ『テロリストのパラソル』は、やはり面白かった。主人公の島村を始め、登場人物は男も女も、ほとんど全員と言っていいほどかっこいい。ちょっと出来過ぎなくらいに。

そして、ドラマ『本棚食堂』で観た、ホットドッグの作り方が出てくる場面をじっくりと読んだ。

『テロリストのパラソル』のホットドッグ
ドラマ『本棚食堂』で作っていた藤原伊織の『テロリストのパラソル』に出てくるホットドックのレシピについて。

 

島村のバーにやって来た二人の男。彼らにビール二本とメニューを持って来るよう言われた島村はメニューはない、あるのはホットドッグだけと答える。

 

「まあいい。そのホットドッグをふたつもらおうか」
オーブンレンジのスイッチをいれた。パンを手にとってふたつに割り、バターをひいた。ソーセージに包丁で刻みをいれる。それからキャベツを切りはじめた。やはり手は震えない。今日も一日、アルコールをコントロールできた。
青いスーツが白いスーツにビールをつぎながら声をかけてきた。
「なんだ、注文があってからキャベツを切るのかよ」
「そうです」
「めんどうじゃねえか」
私は顔をあげた。「めんどうじゃないことをたくさんやるか、めんどうなことをひとつしかやらないか。どちらか選べっていわれたら、私はあとを選ぶタイプでね」
「ややこしいことをいいますね。このバーテン」
「ケチな男だよ」白いスーツが口を開いた。「実際、ケチな野郎だ。けどインテリだな。能書きを並べるケチなインテリだ。そんなやつほど話に筋をとおそうとするんだ。おれのいちばん嫌いなタイプだ」
フライパンにバターを溶かし、ソーセージを軽く炒めた。次に千切りにしたキャベツを放りこんだ。塩と黒コショウ、それにカレー粉をふりかける。キャベツをパンにはさみ、ソーセージを乗せた。オーブンレンジにいれて待った。そのあいだ、ふたりの客は黙ってビールを飲んでいた。ころあいをみてパンをとりだし皿に乗せた。ケチャップとマスタードをスプーンで流し、カウンターに置いた。
青いスーツがホットドッグをひと口かじり、無邪気な声をあげた。「へえ。うまいですね、これ」
「ああ」白いスーツがうなずいた。その目からふっと氷が溶け去ったようにみえた。私の思いちがいかもしれない。

 

カレー粉というのが、その香りを想像させて、より美味しそうに思えるのかもしれない。

この小説は、きっとまた読み返すことになるだろうと思いながら読み終えた。内容を忘れた頃に。

ところで、私はアンブレラもパラソルも雨傘だと思っていたのだけれど、パラソルは雨傘ではなく日傘のことらしい。

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