江國香織『ホテルカクタス』数字の2ときゅうりと帽子が住む、くたびれたアパート

夫と連れ立って、午前中に近所の投票所へ行った。涼しいうちに、と言っても朝から既に暑くて涼しい時間なんてない。投票行って外食、しないでまっすぐ帰った。

 

江國香織『ホテルカクタス』(集英社文庫)を読んだ。

私は、この『ホテルカクタス』が、数ある江國作品の中でもかなり好きだ。

『わたしのベスト3 作家が選ぶ名著名作』(毎日新聞出版)で、川上弘美さんが、江國香織作品から「わたしのベスト3」を選んでいる。

それは、『流しのしたの骨』、『ホテルカクタス』、『とるにたらないものもの』の三冊。

川上さんが最初に選んだのは、“恋と愛の物語”である別の三冊だった。しかし、“恋や愛がおもてに顔を見せていない三冊”を選ぼうと思い直し、選んだのが先ほどの三冊。

実は、私が好きな江國作品は、まさに“恋や愛がおもてに顔を見せていない”作品。だから、『流しのしたの骨』、『ホテルカクタス』、『とるにたらないものもの』も好き。一番好きなのは『間宮兄弟』。

久しぶりに読んだ『ホテルカクタス』は、やっぱりよかった。

『ホテルカクタス』は、画家の佐々木敦子さんとのコラボ作品。素敵な絵がたくさん挿入されていて、まるで大人の絵本のような作品。

ホテルカクタスという名のふるくて、くたびれたアパートに住む、「数字の2」と「きゅうり」と「帽子」という3人(?)の日々を描いた穏やかな小説で、私は、この小説を読むと和む。

最初は、数字の2?、きゅうり?、帽子?と思ったけれど、これは、2ときゅうりと帽子だからこその物語なのだと思う。

 

きゅうりの部屋で聴くために帽子が選んだ音楽は、甘く哀しい女性ヴォーカルのジャズ。ところが、それを3人で聴くと、「これは気恥かしい」ときゅうりが言い、2も同意する。

 

そして、奇妙なことに、帽子もその場にいたたまれないほど、気恥かしさを感じていました。いつも一人でしみじみ聴いている気に入りの曲を、2ときゅうりのいる場所で聴くなんて、まるで裸になっているみたいだ、と、帽子は思いました。

 

「音楽は、個人的なものだな」
帽子が言いました。きゅうりも2も深くうなずいて、それぞれの飲みものを啜りました。

 

ああ、いいなあ。江國さんの小説だなあと思う。

 

『わたしのベスト3 作家が選ぶ名著名作』は、ページをパラパラしながら読みたいところを読むのにちょうどいい本。

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買った本

ずっと気になっていた高野文子『るきさん』(ちくま文庫)を買った。

気になっているけど、まあ、そのうちに、と思って買わないままの本というのが私は結構ある。『るきさん』もそうだったのだけど、やっぱり買おうと思った決め手が、ふと目にした筑摩書房のツイート。

 

 

宮部みゆきさんが、『るきさん』を「何となく心が濁って身体が重たいときに読む特効薬本」として紹介していると知って、やっぱり買おうと決めた。

最近は宮部さんの本を読んでいないけれど、思いっきりハマって次々と読んでいた時期があった。

早速『るきさん』を読んだけれど、面白かった。

主な登場人物は、るきさんと友達のえっちゃんの2人。会社員のえっちゃんはおしゃれで、会社にちょっと気になる人がいたりもする。一方、在宅で仕事をしている、るきさんはというと、どこか浮世離れしていて、おっちょこちょいで、なんだか面白い人。

そんな二人の日常が描かれているのだけど、これは確かに「何となく心が濁って身体が重たいときに読む特効薬本」だと思う。

あと、文庫の表紙イラストにもあるけれど、るきさんが読書好きという設定が読書好きには嬉しい。

文庫の解説は、氷室冴子さん。

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